第3話 君の名は。
「へーじは、人生ってのをやり直したいの?」
幼い女神様は、不思議に思っていそうな首を傾げた格好で聞いてきた。まだ、少し涙の跡を残しながらだ。
「幼い女神様にはわからないかな」
それはそうだろう。与えられた役割を果たす。時に世界に干渉し、見守り続ける事が恐らくは彼女の仕事なのだろう。それを女神として守り続けているであろう彼女は、彼女への世界からの干渉は出来ず、ずっと一人で、孤独だったのだから。
「僕は自由を求めて、それでも手に入らない状況を知っている。だからこそ、本当の自由を手に入れられるチャンスがあるなら手に入れたいって思う」
よくライトノベルで、転生したら好き放題に生きる物語を読んだ。だから、僕も願う。そんなライトノベルのような物語を紡ぎたいと。
「異世界へ転生で、もの凄いチカラがあるといいな」
異世界転生した先でどんな理不尽も跳ね除けられるように、自由をもぎ取る力が欲しいと、そんな要望を出して。
「わかった。じゃあ、へーじの好きに生きてよ。その代わりに、いつか自由って言うのを私に教えてねっ!」
あっさりと、そんな返事が返ってきた。大丈夫か?この女神様。⋯⋯詐欺にあったりしないか若干心配だな。最初は、ヤンデレ自己中な女神様だと思ったけど、一人きりで世界を守ってきのは事実だろうし、僕が僕になったのも彼女のおかげなんだよな。
「―――よし、決めた!」
一つの目標を、この子が僕に願ったことを。自分を楽しませてほしいという願いを僕は叶える。なんたって世界干渉型創作人間らしいからね。大ヒットゲームを作るのはできなかったけど、新しい人生というゲームをこの小さな女神様と楽しむくらいの力はあるだろう。
「何を? へーじは何を決めたの?」
ここに来てから創作力というか、何か生み出せそうな力が幽霊だけども体の中で湧き上がってきている。今なら転生するための世界だって作れるような気がする。それが僕にできるなら、―――もう決めたんだ。
「君が見守る必要のない世界を僕が作る。―――そして、君をここから連れ出すよ」
彼女が世界の安定のために、この空間に縛られているなら僕が自由にしてあげる。それが僕の勝手で自己中で自由を手に入れたらまずすること。そのための世界を僕は創る!
「これだけ好き勝手言い合って、考えを分かち合ったならもう友達みたいなもんだろ? 僕は、へーじ。君の名は?」
この小さな女神様の名前を僕はまだ知らない事に気が付いて、親しくなりたいという気持ちが伝わる様に微笑みかけるように手を差し伸べた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます