第21話 十六の十探し
そういえば、まだ宝石強盗事件の犯人は解決に至っていない。
盗難車は発見された。しかし、犯人たちはいずれも逃げまどっている。その事件でも警察らが動いている。あかねの事件はあかねの事件で、別の警察たちが捜査をしなくていけない。
……ん? 待てよ。
この犯人たちは、あかねを誘拐した犯人と関連があるとか……。
真はスマートフォンで、インターネットをつないで盗難車が発見されたナンバープレートをチェックした。
あかねが言っていた、十六の十の意味がそこにあるかもしれない。
……いや、違う。それに、盗難用のナンバープレートなんてすり替えられている。
なーんて、考えすぎだな。どちらの事件もお金が欲しい人間を関連付けて、それが本当か分からないし……。
真はスマートフォンで利用したインターネットを消した。
真は二年前に二、三回この西京町の繁華街に行ったことがある。それは両親と一緒に買い物に出かけたのだが、この西京町という場所はとても規模の広い場所であり、国道を挟んで東には百貨店などのデパートが立ち並ぶ、比較的人が入りやすい店が多い。
一方国道の西の方では、居酒屋や風俗店、地下のライブハウスやホストクラブなど若者の街が多く、一般的な人たちはそちらの方を歩くことは少ない。
最近では街の環境を良くしたいと、区は東側の方に力を入れているようで、そちらの方は活気があり次々とビルを建てているのだが、西側はどちらかといえばビルが崩壊しているところや、空きビルが多発している。
真は以前行った時に『十六』という店があったような気がして、スマホで検索したら、案の定『十六』という店を発見した。
ただ、そのお店は女性下着を販売している店であり、真にとっては入りづらい。
それに十という言葉が分からないから、やっぱりこの店には聞かない方がいいんじゃないかと、百貨店に入る前に躊躇していた。
その『十六』という店は百貨店の二階にあり、それほど規模の大きい店ではないのだが、前まで行くと、やはり女性ばかりの客層になっている。
真は聞こうか、聞かまいか……。辺りをうろついていたが、下着を見ていた客が、真を不審者だと多少警戒の表情を見ていて、真は勢いで中に入り、一目散に店員らしきエプロンを付けている女性に声を掛けた。
「すみません。ちょっとお聞きしたいんですが、僕、ある女性と待ち合わせをしてまして、その女性が十六の十という言葉だけを残したんですけど、このお店って『十六』というお店ですよね?」
「ええ、そうですけど……」
若い女性店員は、きょとんとした表情を見せていたが、男一人がこの店に入っていることに少し警戒を見せていた。
「十というものって何か聞いたことってありますか」
ここに来て、真は入るんじゃなかったと後悔した。
「いやあ、分かりませんね。待ち合わせですよね。それだったら百貨店の十六階に行かれてみてはいかがでしょうか?」
「ああ、そうですよね」
真はか細い声で、ランジェリーショップを後にした。女性のように目が大きく、肌が白く、丸顔な真だが、それでも、男性というのはすぐに分かる。周りの人間からは真の行動を注目していて、不審者の目で見られているのではないのかと、真は疑心暗鬼のままだった。
次に行ったのは十六階だった。先程の女性店員に言われたこともそうだったのだが、そちらの方も捜査しようと思考を張り巡らせていた。
しかし、見まわしてもその十という数字が良く分からない。その階での、数々の店の店員に聞いてみるのだが、全員分からない回答だった。
真はエレベーターで一階まで降りると、思わずため息を漏らした。
何か、飲み物でも買おう……。
近くにあったコンビニで、温かいミルクティーのペットボトルを購入し、レシートをもらった。
百四十円か……。
今月お金はピンチだった。とはいえ、真の趣味は貯金である。それもどちらかといえばケチな方である。今月はこれくらい貯めたいと設定していたのだが、私物のノートパソコンが壊れたなどして、それの修理費が結構かさばっていたのだ。
その為、最近ではスマートフォンで家計簿のアプリを使って、何に金銭を使用したかを入力している。
真は、しかめっ面をしながらコンビニから出ようと自動ドアが開いてでも、まだレシートと睨めっこしていたのだが、そこに住所が記載されてあることに気づいた。
ここは西京街の三の十六だ。
――十六の十って、住所のことをいっているんじゃないのか。
確か、十代の頃、風俗店やホストクラブが立ち並ぶ西京街の繁華街にあたしは出歩いていった。と、あかねは自分の武勇伝を真に自慢するように話をしていた。そういえば、昔そこで菅刑事に呼び止められていたという話をしていたよな。
もしかすると、あかねは伊藤の茶封筒探しの捜査が難航して、気晴らしに繁華街をうろついていたのではないのか。
真はその推測は正しいかは分からなかったが、西の繁華街の方に出歩いた。
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