第3話 犯行失敗での罰

「本当にすまなかった」

 そう、頭を下げる守山。


 ここは館野が言っていた基地だった。廃墟と化したビルの中だ。電気は通っていなくて、机の上の小さなランタンだけが、部屋の明かりを照らしている。

 その今にも足が折れそうな机を囲むように、クッションと背もたれがある椅子が五脚ある。一週間前に館野が用意したものだ。全てゴミから取ってきたものであり、集めるのに一カ月ほどかかった。


「それで、見られたのはお前だけか?」

 館野は背もたれのある椅子に、深々と座り、足を組んで態度を誇張していた。

「そうだ、すまん」

 そういって、二十半ばの丸坊主の守山は、今にも泣きそうになりながら、謝罪の気持ちから正座になっていた。


「お前らは見られていないということだな」

 館野の視線は若者二人を見上げた。「はい」と、二人は姿勢を正して立ったまま、互いに顔を合わせ、か細い声で答えた。

「じゃあ、守山だけ消せばいいということだな」


「え?」

 守山は顔を上げて、茫然と館野を見た。

「あばよ」

 館野は右手に握っていた、拳銃の銃口を守山の方向に向けた。


 そこで、三発心臓部分に撃ち込んだ。守山は爆音とともに、身体が吹き飛んで倒れた。

「ひい、守山さん」

 思わず、若者二人は跪いて守山を近くで見る。


「お前たちがしたことは失敗だ。そして、これは連帯責任でもある。お前らのどちらをかばったのかは知らないが、守山は自分の命と引き換えに、お前らに託したんだ。わかるか?」

 館野はあくまで冷静に語っていたが、内心は守山が人形のように吹き飛ばされたことが可笑しくて笑ってしまいそうだった。


「オレと野口は成功したから、この宝石を二等分で分ける。お前たちは、リーダーがお陀仏になってしまった以上、二人で再度犯行を狙うか、それとも、ここでリーダーと一緒に死ぬかどちらかだ」

「どちらかでしかないんですか?」

 若い二人組の一人、安宅がいった。ひょろりとしたもやしのような体形で、二十代前半なのにどこか覇気を感じられない。


「そうだ。お前らに姿を見られちゃあ、オレたちは黙ってられないからな」

 二人はお互いの顔を見た。どうしたらいいのか躊躇していた。


「……分かりました。ボクらは次の犯行をします」と、安宅は館野に向かって言った。

「まあ、取り合えず、このお前らのリーダーだった、そいつをどこかの山で埋めてやりな。それと、見られた車をその山近辺にでも遺棄しろ」

 そう言われて、若い二人組は半分納得しつつも、残りの半分は戸惑う気持ちであった。

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