第31話「ご機嫌斜めな2人と幼児化するテスト生」
理科室の爆発と同時に本日の授業は終了した。
全員もう流石に懲りただろう、と思ったのだが……
「アトラクションみたいだったよね!」
「ねー?江崎高校って全部あんな楽しい授業ばかりなのかな?」
「凄いよね!爆発したり間違いなく切断されてるのに、教室もみんなも本当に無傷だったんだもん!」
などと皆、一様に楽しんでいた。
それはそれでどうなのかとも思ったが、みんな楽しそうなのだから、口を挟むのも……と悩んでしまう。
蘭は大満足だったらしいが、笑いすぎて立てなくなっており、現在は理科室に残って休んでいる。
(まあ、久々で楽しかったけどさ。)
結月の授業は相変わらずだった。
集中砲火を受けたのは文句を言いたいところではあるが、本人が楽しそうにしていたのと、結月に甘い江崎の生徒なので結局「まぁ、いいか。」となって流してしまう。
今月はGWの関係上、結月の授業は無いが来月からはまた何度かあるので、本当のところ楽しみでもあったりする。
結月の授業でない時との落差にちょっと苦労するかもな……と苦笑して奏は帰路に着いた。
◆◆◆
部屋には厳治達に頼んで、昨日の内にピックアップした私物が入ってる段ボールが運び込まれていた。
ちょっとお高いホテルクラスの一人部屋であり、来て早々、こんなとこ使っていいのか…と少し不安になったが、どのみち暫くは家に帰るのも難しいので遠慮なく使う事にして荷解きを始めようとしたのだが……
「三上結月。」
「………柊柚子。」
「私もゆーちゃん。あなたもゆーちゃん。」
「本当だ……。」
「仲良しになれる。」
「……うんっ。」
何故か備え付けのテーブルでは柚子と結月はそんなやり取りをしたあと、抱き合って仲良くしている。
柚子は誰かに少し似ているなと思ったが、こうして見ると何となく雰囲気は結月に似ているのだろう、と納得した。
このやり取りだけなら別に全然良いし、何故奏の部屋でやってるのかは謎だが、別にこの2人なら構わないので好きにしてくれとも思う。
「問題は何故、部屋主の俺は正座させられて詰問されているのだろう……。」
取り敢えず来客もいるという事で家から持ってきた折りたたみの小さいテーブルの前には智花と静香がブリザードを放ちながら座ることもせず腰に手を当てて見下ろしてきていた。
「怖い、帰りたい。」
「ここは貴方の部屋でしょう?帰るも何も無いでしょう。」
「お家に帰る。」
「一学期の終わりまで帰れないのだから諦めなさい。それよりも……」
「随分、たくさんの姉妹が出来たのねぇ、奏くん?」
「人前で三上先生といちゃつくのは楽しかったかしら、ナイト様?」
「どうしよう………言い返したくても概ね合ってるから何も言い返せない。」
こないだ姉弟宣言したにも関わらず、大量の姉妹が出来たことへ不満を漏らす智花と、昨日の今日で全校生徒の前で結月に抱きつかれた奏を見て不機嫌さ丸出しの静香。
ハグを終えたらしい柚子は奏の正座を両手で無理矢理崩して間に座り、結月も結月で空気を読まずに奏の首に手を回してへばりつき始めた為、思考放棄を開始した奏が言える事はたった一つだけになってしまった。
「やだ、お家帰る。テスト生やめる。」
「「「「駄目(よ)。」」」」
思考停止して幼児の放ったの様な言葉は四人にあっさり砕かれたのだった。
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