第3話 プリンペン②
目が覚めると、辺りが明るくなっていた。隣ではジョシュが眠っていた。昨日、不可解な出来事があったけれど、何か自分たちにできることもなく、とりあえず寝ることにしたのを思い出した。
「大変だ! 全然とまらないよぉ~!」
遠くから声が聞こえて隣で眠っていたジョシュを起こす。
「ねぇジョシュ! 誰か叫んでるよ」
「ニャンだよ。まだ眠たいのに」
眠たげに顔を前足で撫で付け、四本足で立つと音が出る方角が分かったのか、ヨロヨロとその方向へ歩き出した。
森を抜けた先にはペンギンがいた。どこからどう見てもペンギン、違っていたのは彼の足元だった。
足元からは多くのインクが垂れ流しにされていて、辺りをカラフルに彩っていた。
「どうしたの?」
ハカセが近づくとペンギンは止まった。動き回るのは止まったけれど、お尻から出るインクは変わらずに飛び出していた。
「お尻からインクが出るのが止まらないんだ」
そう言いながらも、相変わらずにインクは飛び出していた。
「お前、名前はなんと言うニャ」
まだ眠そうなジョシュはペンギンに聞いた。
「僕の名前はプリンペン。お尻からインクが出てきて困ってるんだ」
「どうしてそんなにお尻からインクが出るニャ? インクでも食べてるのニャ?」
「そんなことないよ。木の実しか食べてないし、やっぱり病気なんだ!」
慌てふためくプリンペンを目の当たりにして僕とジョシュは目を見合わせる。
そのとき、駆け寄ってきたネズミが言った。
「ここにいたんですねプリンペンさん。探しましたよ」
そのネズミには背中と首周りに黒い線の模様が付いていた。続けてネズミは言った。
「ちょうど良かった。あなたのそのインクがまた必要になったのでもらいに来たのです」
ハカセとジョシュは二人?二匹?についていくことにした。
ついていった先にはキレイに色づけされた小さな家が立ち並んでいた。
様々な色をした家が存在していて、多くのネズミたちがせっせと家の壁に色を塗っていた。
驚いているハカセとジョシュを無視して、ネズミは言った。
「プリンペンさんは、あっちの方のインクが足りないので補充をお願いします」
プリンペンは言われるがままに指さされた場所へと向かう。
「あなたたちに相談があるのですが――」
そう言って、ネズミはプリンペンが向かった方向とは別の茂みへと案内した。
「それで話とは?」
ジョシュは、どんな意図で連れてこられたのか分からずイライラしているようだ。心なしか元気が無いように見えた。
「申し遅れました。私たちはマウスと言います。あなたたちは昨日の夜に起こった出来事を覚えていますか?」
昨日の夜に起こったことなんて忘れるわけもない。
「何かわからない生き物がプリンターのインクを食べていたことですか?」
ハカセの問いに、ネズミはゆっくりとうなずいた。
「そうです。あれを行っていたのはプリンペンさんなんです」
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