第5話 .マドモアゼル・ルージュ

俺たちはホテルのバーにやってきた。

窓の外には、マカオのホテルがいろいろ見える。

ただ、旧市街の建物は、間に山があるので見えない。


1番奥の個室に通される。こんな場所があるなんて、関係者以外知らないんではないだろうか。


俺はドライマティーニにしようかと思ったが、ふと気分を変えてギブソンを注文する。彼女は自分の服の色と同じキールだ。


「何に乾杯かな?」俺が聞く。

「とりあえずこの出会いに乾杯でいいんじゃない?」彼女が言う


「オッケー。2人の出会いを祝して乾杯。」


俺たちは軽くづラスを当てる。チン、とよい音がして、お互いのグラスの中の液体が揺れる。


俺はギブソンを一口飲む。パールオニオンの香りがかすかにする。


「ギブソンを注文する人なんて初めて見たわ。」彼女は言う。


「いや俺こそギブソンのオーダーが通るなんてなかなか洒落たバーだなって思うよ。」

ギブソンとは、マティーニに近いんだが、オリーブの代わりにパールオニオンを使う。


パールオニオンを備えるバーは少ない。それだけこだわりがあると言うことだ。


「いい店だね。きっとオーナーがいいんだよ。マドモアゼル・ルージュ。」。


「お世辞でも嬉しいわ。さっきの動きはさすだね。わかってたの?」

彼女は俺の目を見つめながら聞く。



俺は正直に答える。

「ディーラーの顔を見たらね。でもしっかり狙ったところに入れられる。素晴らしいディーラーだよ。」


「リタはうちのナンバーワンディーよ。でも今回こんなことになったから最悪になるわね。」

あのディーラーはリタと言うらしい。


「それはかわいそうだね。まぁさっき1枚チップであげたけど、あれはシェアするんだろう。だから、これは彼女にパーソナルにあげてくれるか。」


俺はブラックゴールドチップを彼女に渡す。


彼女はちょっと驚いたようだが、笑顔で答える。


「ありがとう。彼女にあげとくわ。彼女をつなぎとめておくことにする。それとも、夜の伽を御所望?」


マドモアゼル・ルージュは妖艶に笑う。


「リタも悪くないんだけれど。今夜は、真っ赤に染まりたい気分なんだ。」俺が言う。


「そんなことしたら、明日あなたは動けなくなるわよ。全部絞り取られるわよ。」


「まぁ、今日勝った分の一部は還元しないとねリタの査定の為にも。」俺は笑う。


「こんな時に他の女の話をしないの。私のためにって言ってよ。」


「もちろん、それがメインさ。マドモアゼルルージュ。いや、ベロニカ・チャオ。」


マドモアゼルルージュとはベロニカ・チャオという名前だ。ベロニカは、マカオのカジノを仕切っていたスタン・チャオの孫娘だ。


ただし、彼女は第三夫人の孫になる。スタンは、妻を3人持っていた。彼の死後、彼の遺産及び利権をめぐって、骨肉の争いが繰り広げられている。今でもそうだ。表面上は仲良くしているが、第一夫人、第二夫人、第三夫人の血族は、切磋琢磨と言えば聞こえが良いが、お互いに足を引っ張り合っているのだ。


まぁ今は、それに加え、外資系の連中の進出により、身内だけで争えば良いということでもなくなっているのだが。


「私のことはヴェルって呼んで。あなたのことは?」

「レイでいいさ。」


「スティング・レイね。」彼女は、俺の別の二つ名を言う。

巣ティングレイとはエイのことふぁが、スティングというのは刺すという意味あ。


「わかったわ。レイ。でも、ほんとに今夜は大損害ね。ジャンケット経由で話が来たときに、断ればよかった。」


ヴェルは一見残念そうに、でも実際は残念でなさそうに言った・


「まあ、れ以上の損害を、君がゴールドブラック二枚と体を張って止めたわけだ。俺があれからまだあそこにいたら、あの3倍くらい稼いじゃったかもしれないしな。」


俺はヴェルに真顔で言う。結構真剣だからな。


「さすがに、一晩で、5億パタカは勘弁ね。」

彼女は肩をすくめる。豊満な胸が揺れる。


「そこまで行ったら、デイリーのオペレーションに支障が出るわ。あの太った国営企業の豚どもを100人ぐらい殺さないとやって行けなくなるわよ。」


ヴェルはそう言って笑う。まぁ、あんな豚どもが何百人死のうが、俺の知ったことでは無いのだが。


「とりあえずマドモアゼル・ルージュに足止めされてみたけど、なかなか面白い時間だったよ。アルコールは一杯だけだ。そろそろ場に戻るかな。」


「何言ってるのよ。メイはこれからでしょう。お望み通り、真っ赤に染め上げてあげるわ。」


彼女は妖しく笑うと、席を立つ。俺も席を立って出口に向かう。


彼女は俺の腕に豊満な胸をぴったりと押し付けてきた。


俺たちは専用エレベーターに乗り,ペントハウスの俺の部屋に向かった。



=====

マドモアゼル・ルージュの招待が明らかになりました。

彼女はこのホテル以外にもカジノを保有していまう。祖父から受け注いだものもありますが、このカジノは彼女が建てたものです。


タイパの夜景はカジノ側は綺麗ですが、山のほうは何もありません。

開発が進むと、カジノが増えるかもしれませんが、そろそろ 飽和状態で新しいものは建築しにくいかもしれません。



「気に入った」

「面白い」

「続きが気になる」

「マカオ行きたい」

「カジノ当てたい」

「金がない」

「反応ないと作者がかわいそうだから」

「愛田さん抱いて」(生物学的な女性のみ)


など少しでも感じられたかたは、★、コメント、フロー、レ













「ギブソンって美味しいの?」

「知らない人のほうが多いね。マティーニしか知らない人も多いから、あえてギブソンを置く店は多くないんだよ。」


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