第2話 出陣準備


仮眠のあと俺はバトラーにサンドウィッチとオレンジジュースを頼んだ。


程なく部屋に届けられる。


ヘヴィな食事をするつもりはない。アルコールなんか論外だ。これからは感覚を研ぎすませる戦いの時間だ。


ただし、まだちょっと時間は早い。カジノのピークタイムは夜だ。もちろん一対一でディーラーと戦うのが好きな奴もいるだろうが、俺は他のプレイヤーと一緒に戦う方を選ぶ。


不確定要素も多くなるのだが、場の雰囲気が他の参加者によって作られることも多いのだ。


また、バカラやポーカー、ダブルデッキブラックジャックのように、複数の参加者がいなければ、成立しないようなものもある。


純粋に1人でやるのであれば、スロットマシンでもやってれば良いのだ。ただ、最近はデジタル化が進みすぎていて、果たして勝てるのかということについては、甚だ疑問だが。


今やかなりの部分が機械化されてしまっていて、人が介在する余地が減ってきていることも確かではあるが、それでもポーカーやテキサスホールデム、ダブルデッキブラックジャックやバカラなどは、参加者同士、あるいは参加者とディーラーとの間の駆け引きがかなりの部分を占める。この緊張感が好きな連中も多いのだ。


のんびりやるのであれば、キノとか、スポーツベッティングもある。後者は何やらメジャーリーガーの通訳がやっていたようだが、俺に言わせればぬるい。スポーツベットは、ベットしたら基本的に放置して、数時間あるいは数日待つ必要があるのだから。


そんなまだるっこしい事はやってられない。

勝負は一瞬の勘と判断力。それが脳を刺激するのだ。


俺は、最新のマカオのカジノガイドを眺める。最近は開発が多いので、特にコタイ地区は外資を含めた新しいカジノが多い。なにしろ、二つの島を一つにしてしまい、丘を削って平地を作り、カジノ用地にしているのだ。


ラスベガスでお馴染みのところもかなり進出してきている。それはそれでいいかもしれないが、マカオの猥雑さの良さもある。


俺が今回最初に訪れたのは、マカオ資本の新しいホテルだ。


マカオのカジノを牛耳っていたスタン・チャオの一族がやっているものだ。まぁそうは言ってもあそこは内紛が多いのだが。


このカジノは、かなりオーソドックスな感じだ。ルーレットやブラックジャックなどの通常のものに加えて、中国人が好きなパイガウポーカーもある。


俺が行くハイローラーテーブルについては、やはりルーレット、ブラックジャック、バカラなど、オーソドックスなものだ。マカオ資本だからか、アメリカから来ているテキサスホールデムは無い。ただし、スリーカードポーカーがある。これはスピードが速いので、あっという間に金が溶けていく。


ちなみに、サイコロを振るクラップスはハイローラーの方にはない。あれはあまりにうるさいので、周囲に迷惑がかかってしまう。特に中国人は興奮すると大声を出すので、喧騒の中でやるのでなければ向いていない。


ハイローラーエリアは基本的にそれほどうるさくないので、あまりクラップスを好む人は少ないのだ。クラップスが好きな連中は、ハイローラーテーブルではなく、庶民テーブルへ行く。


庶民テーブルは掛け金の上限が低いので、面白みが少ないと感じる連中も多いかもしれない。まぁそうは言っても、一回十万円位は賭けられるので、好きな連中はそれで満足しているようだ。


テレビをつけてみる。ポルトガル語、英語、広東語、北京語、韓国語の番組をやっている。どうやら日本語はこの時間やっていないようだ。こんなところにも日本の凋落を感じてしまう。


ちなみに、俺が空港とかで一万円札をチップに使っていたのは、日本人であることを示すためだ。入国審査とかで、日本人であれば、比較的スムーズなのだ。また、現地政府の偉いさんからのいちゃもんもつけられにくい。もちろん、たまに木っ端役人が何か言い始める事はあるが、ついてきた別の連中に目配せすれば何とかなる。


あまりにいろいろ揉めそうな時は、香港の友人の名前を出し、お前の名前をあいつに言うぞと言うと、態度がころっと変わる。


金と権力に弱い連中は多いのだ。ただそこで無節操に金ばかり払うのは俺の主義ではない。

あくまで金は効率的に使うべきだ。



マカオのローカル局の英語ニュースを見る。 たいしたものはやっていないが、

昔のマカオのボス、スタン・チャオの生誕何周年だか没後何年だかの特集をやっている。


まあマカオがカジノで栄えるきっかけを作り、利権を独り占めしたある意味凄いやつである。


マカオの中国返還後も一族で利権を握っていたが、そのうちにギャンブルが外資にも解放された。


近年になり、利権が一部開放され、外資系のカジノが沢山マカオに進出してくるようになった。


ただ、マカオの旧市街のほうは比較的カジノ建設が可能なエリアが限られているため、新しく開発され、2つの島をつなげてしまったコタイの方に、大き目な外資系カジノが沢山出来ている。

内部のアトラクションとか食事とか噴水とかショッピングモール、ショーなんかを充実して、客を呼びこもうとしている。


ただ、コタイは比較的場所が悪い。それに、ラスベガスと違って家族連れがやっているような場所ではない。


外資系も苦戦している中、COVIDが起きてしまい、かなりの倒産やら撤退やらがあったようだ。


不況になると不要不急の外出をやめたり、馬鹿な金の使い方をしたくないと思う連中が増えるのだ。


マカオは、ギャンブル好きの中国人やアジアの華僑などが支えるカジノリゾートだ。

西洋スタイルが必ずしも大成功するとは限らない。



===

比較的反応がいいので、一日早くアップします。時間を一定に投稿しようかと思ったのですが、まあいいです。


解説および準備回です。

次回、話が動きます。


クラップス、あるいはクラップテーブルというのは、サイコロを使うものです。

参加者が順番にサイコロを振ります。


賭け方としては単純で、いくつより上か下か、とか、何と何が並ぶか、とかです。

PASS/DON'T PASS COME/DON'T COMEに賭けるのが基本ですが、ぼやぼやしているとどんどん進んでしまいます。 賭ける→投げる→叫ぶ→賭ける の繰り返しですね。


ぼーっと生きてる人には向きません。



あと、「日本のパスポートを出すんだから一万円とかあげなくても日本人だとわかるだろう」という突っ込みは無しでお願いします( ´∀` )。相手からちゃんと扱ってもらうのが大事です。




「気に入った」

「面白い」

「続きが気になる」

「マカオ行きたい」

「カジノ当てたい」

「金がない」

「反応ないと作者がかわいそうだから」

「愛田さん抱いて」(女性のみ)←これ最重要です。おっさんはやめてください。


など少しでも感じられたかたは、★、コメント、フロー、レビューなどをお願いします。


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