第2話 鳴神の

 セーラー服だろう。どこの高校かは分からない。

 俺はそもそも職場と自宅の往復、そして趣味であるカフェや書館巡りぐらいしかしない。

 仕事も夜勤ばかりだ。

 制服だけで学校名などわかるわけもない。あまり興味もないし。

「君、風邪をひくぞ」

 少女に傘をさす。

 何故?

 自問する。…なぜだろうな。気紛れだ。

 高校にはいかず中卒で就職。夜勤続きで隈が酷く、色付きの眼鏡が外せない。そんな男が、子どもの心配か?

 否、年齢は同じぐらいだろう。少し年上か。

 傘の下で少女はこちらを向く、琥珀色の瞳をしている。長い黒髪がさらりと揺れ、色の薄い肌。

 あぁ、綺麗だ。

 だから、口が動く、喉が震える。


「鳴神の 少しとよみて さし曇り

          雨も降らぬか 君を留めむ」


雷が遠く響いた。

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