隠滅

「えっと……」



「できたよとおちゃん。」



「あ、おう!できたか!フィアナさん、できましたよ!」



白い煙を出しているその料理は、今までに見たことがない魚の丸焼きだった。



「その料理は僕らの住む国では有名な魚なんですよ!」



「そうなんですか、ありがとうございます。」



当たり前だけど他国の人、だよね…。でもやっぱりおかしいよ、なんでこんな場所にきたんだろう。


まるで話を遮るように登場した魚を食べながら私はそっと聞いた。



「さっきの話なんですけど…なんでこの国にいらしたんですか?」



私や母、この大地に住んでる民族をサーンキヤ族と呼ぶということは私が5歳くらいの時に教えてもらった。サーンキヤ族というのは世界でも非常に珍しい民族で、他の人間と比べて寒さに特別強いらしい。


だから私たちサーンキヤ族以外は、この白い大地に足を踏み入れることすら滅多にしないはずだ。


しかし、この人たちはまるでサーンキヤ族のような格好をしてこの白い大地に堂々と足を踏み入れた。

足を踏み入れただけでなくどこか生活感すらこの人たちからは感じる。


なんで、どうやって…?



ウォーカーさんが鉄のフォークで魚のお腹を刺した時数秒の沈黙からようやく口を開けた。



「僕たち2人は、いえ…僕は、この白い大地にある調査を任されたのです。」



「ある、調査?」



「僕たちの目的はこの国の魚の生態系を調べることです」

 


「生態系…」



「魚の種類、それだけでなく、どんな動物が生息しているか…その調査ですよ。」



「パアルさんは違うんですか?」



私がそう言うと、ウォーカーさんは歯を強く噛み締めながら悔しそうな顔をした。



「パアルには申し訳ないことをした。パアルは僕の意思で連れてきたんです。」



「そう、なんですか…」



「ごちそうさま!とおちゃん、僕もう寝るね!おやすみー」



「パアルくんなんて言ったんですか?」



「ああ、寝ると言ってました。」



「寝る…そうですか、」



私たちの国ではまだ寝るような時間ではないがパアルくんの国ではもう寝る時間ということだろうか。


寝る時間……そういえば遭難してからもう1時間ぐらいは経ったかな。


「美味しかったです、ごちそうさまでした。」


食べたことのない魚だったがその特別感からかより美味しく感じた。


とは言っても母のことを考えればゆっくりはしていられなかった。



「あの実は…体が弱い母が家で待っていて、帰らなければならないんです。あの、本当に今日のことは感謝しています、ありがとうございました。」



なんと言ったらいいものか、これ以上の感謝は私の知る言葉の範囲では言い表すことができなかった。



「ですが、道はわかりますか?」



「きっと、大丈夫です。」



「念の為に地図のようなものを差し上げましょう…」



「そんな、申し訳ないです…」



「いえいえ。」



ウォーカーさんが黒いバックを部屋から持ってきてガサゴソといじりだした。



「これかな…」



私が手を出して待っていると出てきたものはどうにも地図には見えないものだった。



「それ……」



「あ、これは!!」



「え……」



厚い紙のようなものがバックから出て、その紙に文字が書かれてあったのが一瞬、見えた。

そこには

「サーンキヤ族隠滅計画」


と、私の読める文字でしっかりと書かれてあった。



「それ……なんですか!!」



「違う!これは…!」



逃げなきゃ…!殺される、、、



私は家を飛び出し、服装もまともに考えていないままでただただ必死に白い大地を足を動かして走った。



「道はある…、まだうっすらと雪を掻き分けた跡が…。この跡を辿ればよかったんだ!」



後ろから足音が聞こえてくる気がした。その音が本当かどうかすらも確認する気にはとてもならなかったし、雲のような真っ白な霧によって振り向いたってどうせその姿は見えないだろう。



だから今は振り返らずにただ走らないと。殺されちゃう。私も、、



母さんも!!!!

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