遭難
風の音がその冷たさをさらに加速させていた、白い雪の大地。
白色の雪に白色の地面、少しずつ雪の地面を掻き分けながら進んだ。空に浮かぶ雲すらも見えない。まるでその雲が地上へと降りてきたように、空気すらも真っ白だった。
「海はこっちかな」もうこれ以上不安になりたくない、そんな思いを抱えるのも無理はなかった。地図もなければ目印もない、頼りになるのは海の潮の匂いのみなんだ。
私も最初は驚いた。波に触れれば足が凍ってしまうような無限の海に無限の白い大地を越えて向かわなければならないということに。
いや?決して無限の白い大地などではないだろう、そんな大地世界には恐らく存在しない。ならばなぜこの大地が無限と呼ばれているか、それはさっきの通り、目印がないからだ。
海を無限とは言ったがどの方向に対しても広がっているわけではない。あくまでもどこかの方向に対しての無限であり、その方向を間違えてしまえば…つまり、一度この大地で迷ってしまえば間違いなく死ぬということだ。
白い土は途絶えず進む、それを人は無限と言った。
「え、あれ?おかしいな、いつもならそろそろ海に着くのに…」
体内時計というやつだ、別に正確ではないけどだいたいわかる。家を出てから今頃になればだいたい海が見えるはずなんだ。しかし、私の前に続いていたのはまだ掻き分けられていない白い土だった。
「そんな……!そんなわけない、匂いを辿えていなかった!?な、、私が遭難したの?そんなこと、あるわけない。」
根拠なんて特になかったが、今はとにかく自分の焦りを誤魔化さねばならなかったのだ。
しかし、汗が出てそれが一瞬で凍り体の熱をさらに奪っていく…
「落ち着け、落ち着け…」
落ち着いたところで意味はない。今から道を引き返そうにも引き返す方向が正しいのかさえもまともにわからなくなっていたのだから。
「誰か助けて」必死の叫びももはや声にはならなかった。いよいよ喉すらも凍ったのだろうか?
いやいや、そんなわけがない。そんなこと起こらない…ならばなんでこんなに声が出ない?
いや、出てるんだ。でもこの風の中じゃ誰にも届くわけがない。だって、自分の耳にすら届いていないんだから。
「……人?とおちゃん、あれ人だよ!!人が来たんだ!」
「え?」
自分の声よりはっきりと私の耳に届いていたその声の居場所を見ると、そこには雪のドームのように雪が降り積もっている木の家があった。
そしてその中には、火を焚いている少年と大人が居た。
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