サーンキヤ族と白い大地。

学生作家志望

第一話雪の大地

「幸せになりなさい」そう言われて私はつい怒ってしまったのを今でも鮮明に覚えている。「こんな場所に産んでおいて何を言っているのか」私が叫ぶと母の目がギュッと焦るように瞬きをした。


「ごめんね、ごめんね。」母はただ同じ言葉を繰り返すことしかしてこなかった。私だっていくら暴言を吐こうがこの大地から抜け出すことができないことなどとうにわかっていた。


先進国と呼ばれるような国では最新技術がどうこうの話を進めているらしい。が、そんなことを進められる余裕があるならば私たちのようなまともに食事も取れるかどうか怪しい民族や国を救ってほしい。


木が無いから紙がなかった。メッセージなんてどこにも届かないんだ。カラカラと音を立てる薪が私たちの命の綱だが、そんな薪も最小限の使用に抑えるほかなかった。


固く結んだはずの紐が数分のうちに解けたりするように、希望に絶望がすぐ絡まってあっさりと解けていった。


熱なんてものは、すぐに体から去っていったのだった。


色が剥げ落ちた古いドアを開いた時、体を温める熱とともに希望が解けた。


「頑張ってね。」母は震えながらの優しい声で私にそう言った。


今日も命懸けの漁が始まるのだ。



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