第50話 レティとマリアナとのデビュタント前のお茶会

お茶会当日、お出迎えから淑女教育で培った所作を披露しました。背筋を伸ばして、にこやかな微笑み。手先からつま先までビシッとした、佇まい。表現が難しいわね。そんな感じで本日出迎えております。


「アイリ、頑張ったのね。だいぶ佇まいが綺麗よ。でもね、終わったー、と思った時が、少し気を抜いているわよ」

レティの指摘、すごい。そう、気を抜きました。


「さすが公爵令嬢レティ、私が気を抜いたところをよく見抜いたわね。恐ろしい」


「何言っているのよ、アイリ。最後まで気を抜いてはダメなのよ」


「ふふふっ、2人とも。私はわからなかったわよ。洗練された身のこなしと思っていたのに」


「マリアナ、あなたにも淑女教育をしましょうか?」


「いやよ、レティのは厳しいから」

レティ、やっぱり厳しいのね。第二王子の婚約者だものね。生まれた時、すでに番とわかっていたから、教育も早かったのでしょうね。私みたいな、にわか令嬢ではない。


「さぁ、こちらに来てください。ガゼボで女子会しましょう」


「「じょしかい?」」


「仲の良い女の子同士が、おしゃれなことや恋バナなど、食べて喋る会よ。さぁ、座ってください。食べましょう」


「「コイバナ?」」


「恋バナとは、恋のお話や、彼の愚痴でも良い。みんなでお話しするということよ」


それから、私の領地でのことや、デビュタントのドレスの話で盛り上がった。


「アイリはどういうドレスにしたの」

マリアナもデビュタントが一緒なので、どういうデザインかが、興味津々の様子。


「マリアナ、レティ、お恥ずかしながら、背中に傷があるやらかしをしたので、肩や背中をレースやオーガンジーを刺繍したドレスにするのよ」


「⁈⁉︎そうだったわ、アイリは傷があるのよね。大丈夫だったの?まだ痛い?」


レティもマリアナも心配してくれている。


「傷の痛みはなくなったわ。でも、傷がね、それがあるので、背中は出せないのよ。でも、テッシーがすごく素敵なドレスを作ってくださったのよ。それで傷は全く見えないと思うわよ」


そうなのです。私のデザインを元に作ったのだろうが、全く別物の、素敵なドレスが出来上がった。ホルターネックのふわりとした流れるようなオーガンジーのスカート。全体的に刺繍を施している。刺繍は私がしました。胸元と背中は刺繍をしたオーガンジーをあてたもの。


そして、今回の目玉は、コルセットをドレスに着けてしまいました。ぎゅうぎゅうにコルセットをされるのは嫌だし、そんなにコルセットをして、体に悪い気がするの。だから、コルセットなしでいいではないかと思ったのですよ。でも、お母さまにコルセットはしなさいと言われ、そうだ、胸だ。胸の横の脇肉を寄せて寄せて上げて上げて盛らな、ゲフンゲフン、しっかり包み込まなくてはいけないから、コルセットは必要だった。胸のためにはコルセット、ぎゅーぎゅーコルセットではないものをドレスにつけてしまった。胸はグイーンと、しっかり補強できるコルセット付きドレスにしました。王宮の料理が食べられないと困るのじゃない。ありの〜ままの〜です?


「このシーズン、ドレス仕立て店は大忙しなのよね。デビュタントのドレスも、似たようなものになってしまうのだけど、ねぇ、アイリ、ドレス見せてもらえないかしら。テオドール様がお作りになったドレスみたいわ。もう、なんで、アイリ早く帰ってこないのよ。ドレスの話したかったのに、もう」

マリアナ,ごめん。領地でやることが多くて忙しかったのよ。青い海、白い砂浜,そしてココヤシの木。ドリガン親方の弟の木工職人ドリルさんにデッキチェアーを作ってもらい、くつろいでいた時間もあった。パラソルも作りてもらいました。デビュタントも学園入学も忘れ、恋愛小説を読んでいた。やっぱり大人の恋、いいわぁ。燃え上がる大人の恋してみたい。でも、私は16歳。まだまだ、お子様か。最近の言動が、前世の年齢ではない行動をとっている。16歳、そうよ、高校生を再度挑戦よ。よし、前向きになってきた。やっぱりレティやマリアナとお友達になったことが大きいのかなぁ。この世界のお友達。それも洗練された令嬢たち。前と全然違う高校生活だけど。


あぁ、女子会楽しい。


「マリアナ、いいわよ。では、家の方に行きましょう。デビュタントのドレスとしてはダメというのならはっきり言ってね。まだ、やり直し期間があるので、お願い教えてね」


「わかったわ。でも、楽しみよ。テオドール様とアイリが考えたドレスでしょ」


「そうなのよ、レティ。私、あまりお茶会とか出ていないから、ドレスの流行りがわからないのよ」


「アイリは型にハマっていないドレスを考えるのが得意だから、流行りなんて気にしなくていいのではないの?」

ダメなのよ、レティ。異端児と思われてしまうのはいけないのよ。


「やっぱり、あまり奇抜すぎるのも良くないと思うんだけど、ねえ,マリアナ、そう思わない?


「アイリの考えるドレスは、着てみたいと思うドレスだから、奇抜なんて思わないわよ。あー、楽しみよ。どんなドレスなのかしら」


マリアナがウキウキした感情を露わにしている。どうしよう、期待外れだったら。ドキドキ。


先にメイドにドレスを用意してもらっていた。


「ここよ、入って〜」

ドアを開けると、ドレスがマネキンもどきにかかっていた。


「「まぁ、すてき、すごいわ」」


「レティ、マリアナ、奇抜すぎない?大丈夫?」


レティが興奮気味に言った。

「アイリ、このドレス,すごいわ。アイリが刺繍をしたの?オーガンジーに刺繍。肌の露出が少ないのに、大人びているわ」


「やっぱり、なんで早く帰ってこなかったのよ、もう、アイリ。一緒にドレスを考えて、テオドール様に作って欲しかったわ」

本当にごめんなさい、マリアナ。


背中の傷があるので、露出を控えたドレス。だけど、エレガントに出来たと思う。テッシー、本当に最高です。


それから、髪型の話、アクセサリーの話になった。

私は、イヤリングしかつけない事。

髪型は下ろすか、アップにするか迷い中であること。


「レティのデビュタントの髪型はどうしたの?」

「私はアップにしたのよ」

「私も考え中なのよ」

あら、マリアナも考え中なんだ。


「ねえ、ここで、髪の毛のアレンジを考えない?」

マリアナが提案してきた。


「では、髪を結うことが得意なメイドを呼んできてもらうわね」

ここで初登場、メイドのエリザです。


「エリザ、ごめんなさい。これからデビュタントの髪型を考えていこうと思っているの。協力して欲しいの」

「もちろんです。アイリ様。アイリ様にいつも提案されている結び方や盛り方など試したいです。では、可愛く結いましょう」

エリザ、ノリノリです。


まずは、ハーフアップ。上の方をふわりとした編み込みにして、おろした髪の毛先はふわりと巻く。


ゆるふわシニヨンです

カールアップ:高い位置のアップ(盛り盛り)

クラシカルなアップ

ポニーテールにして髪の毛を巻く 


どうでしょう。

エリザはふわりとした編み込みと私が伝えると、イメージ通りの編み込みになるし、この子、スキル美容師じゃないの?そんなのないかな。

私は盛り盛りしてもらいました。


「どうしようかしら、このハーフアップ?や、ゆるふわシニヨン?すごく可愛いの」


「あら、いたいた。アイリちゃん、みんなでデビュタントの話をしているとフルーラから聞いて、来てみたの。アラベルト公爵令嬢様、ドランタール侯爵令嬢様、ごきげんよう」


「「テオドール様、ごきげんよう」」

うわぁ、これが貴族の挨拶だ。私はまだまだだった。


「アイリちゃん、今は髪型を決めているの?あら、すごく可愛いじゃないの。ドランタール侯爵令嬢様、すごくかわいい。可愛さが、より一層可愛くなっているわ。ねぇ、エリザちゃん、うちの美容担当にならないかしら?」


「テッシーはうちの商会の人だけど、引き抜きしないで」


「アイリちゃん、この子、美に対して優秀よ」


「知っているわよ。髪型や化粧、すごく上手よ」


「ここでアイリちゃんにいじめられていたら、いつでもうちに来てね。待っているわ」


「テッシー、いじめないって(前のアイリはそういう事していたかも知らないけど)」


エリザを引き抜きしないでと言いたいが、商会の美容ドレス部門でも欲しい人材なのよね。


美容部門の講習会でもしようかな。そうすれば、知識が広がるかしら。化粧の基礎から始まり、メイク、髪型、ネイルもいいのではないの?


忘れていたわ、ネイルよ、ネイル。指先を綺麗に見せるアイテムの一つ。

つけ爪も流行っていたわね。1◯◯均でも,豊富にあったのよ。びっくりだったわ。

妹たちも高校時代、遊びに行く時につけていたけど、ゴロゴロ、落ちていたのよね、つけ爪。いつの間にか取れちゃうのよ、落ちていたら、ここに置いておいてね、と化粧道具箱を指して、妹たち、笑っていたことがあったわね。


確か、昔はホウセンカや紅花などで塗られていた。

古代エジプトでは、ヘナの花?髪のトリートメント効果にも良いのよね。また、図書館へ行ってみよう。それか、ふらふらと鑑定しながら散策していれば、マニュキアに使える草花です、と鑑定さんが教えてくれるかしらね。キョロキョロとしていると、不審者かしら。

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