第4話 交わり出す『ナカマ』
ヒュウヒュウと、季節外れの木枯らしのような風が吹く。
否、それは実際に吹く風の音では無い。ヒューと、草むらの中の誰かが睨み合う緊張感からくる一種の幻聴だ。
野太い「次回へ続く!」との大音声とパシンという乾いた音が聞こえた以外、そこでは沈黙が場を支配していた。
「もう一度、言う」
ゴクリ、と生唾を飲む音は、果たしてどこからか。
「敵対する者で無ければ、出てこい。ギルド公認の冒険者として、危害は加えないと誓う。出て来ないのならば・・・」
首元に光る認識票を指でツウとなぞる。
「第15
カチャリ、と握り直した大斧が音を立て、彼の身から出る闘志が威圧感となって溢れ出る。・・・それにイの一番に「ひ!」と声を立てたのが隣にいるアイネで無ければ、もっと良かったのだが。
「ふ・・・ふふ」
「あ?」
いや、むしろ緊迫の破断界となったのだから、それで良かったのかもしれない。
「はぁっはっはっはあ!降参、降参だ!」
次の瞬間、草むらからニョッキと飛び出したのは1本の六角棒。それが左右に振られてガサガサと草を鳴らす。
「出て行く故、努々切り込むで無いぞ」
そう言ってひょっこりと覗かせた顔を見て、再度アイネは「ひ!」と短い悲鳴を上げた。
しかし、それも無理は無いだろう。まず覗いたのは日に焼けたと言えば語弊があると思えるほどに真っ黒な、まるで煮卵のような禿頭だ。その下には不釣り合いに大きなドングリ眼が爛々と光り、口元には虎髭と鍾馗髭の中間のような髭を蓄えたその顔は、控え目に言っても威圧感が凄い。
「おや?驚かせてしまったかな」
しかし、言葉使いも丁寧に笑みを浮かべたその巌のような顔からは意外や意外、隠しきれない人の好さが伺える。
「い、いえいえ!こ、こ、こちら、こそ・・・」
「で、ありますかな?」
が、そこでドングリ眼を零れんばかりに引ん剝いて見せたから、全ては台無しだ。歩み寄りかけたアイネは、再び怯えたようにヒューの背中に隠れる。
「はっは、驚かせてしまったようであるな」
「お前・・・ホントに人間か?」
カラカラと笑う男に対し、構えを解き大斧を担ぎなおしたヒューも呆れたように呟いた。
「さてもさても。拙僧も生まれがどうかは分かりませぬからなあ」
その暴言に近い台詞に軽口で返しつつ、バンバンと胸板を叩きながら現れた全身は、これまた別ベクトルで見事。諸肌晒した上半身はヒューとは比べ物にならぬほどに筋肉が満ち満ちて、まるではち切れんばかり。その筋肉も、金属製で彼の身の丈以上もある六角棒を軽々と担いでいる事から伊達や酔狂、ましてや見せ筋では無いのだろう。その筋骨隆々に鍛えられた四肢は、日に焼けた色も相まってまるでログハウスの丸太のようだ。
「いやホント、何なんだよお前?」
再び、見上げながらヒューが呟く。彼もそこいらの男たちよりは背が高いのだが、目の前の坊主頭はそれより頭1つ分ほど上背があるからだ。話に聞くオークや巨人種では無いにしても、いささか人間離れが過ぎる。
「はっはは。何だ何だと問われれば、拙僧らも貴殿らと同じ冒険者にて」
そう言ってキラリと見せるのは、間違い無くヒューたちの物と同じ認識票。
「第13
「まあ、ギルドが認めたんなら良いけどよ・・・さっきの、ありゃ何だ?」
「はは、なあに、ちょっとしたお茶目にて」
「お茶目で仲間がビビらされちゃ・・・・・・ん?待て、拙僧‟ら„?」
「そうですわ。一緒にされるのは不本意ですけれども」
続いてガサリと草むらを揺らした影を見て、今度はヒューが「ほう」と息を呑んだ。
「・・・何ですの、その不躾なのは?」
思わず舌なめずりをするヒューに険のある視線を向けて尚、その女性は同姓のアイネすら惚けてしまいそうなほどに美麗だった。
黒い紗のローブに粗方隠されている中からチラリと覗く太腿は滴りそうなくらい肉感的で、その上に座する胸部は見えずとも分かる豊満さ。バサリとフードを外せば、そこから零れる金糸の如き輝く長髪はボリューミィにカールされて顔を包み込む。無論、相貌の素晴らしさなぞは今更語るまでも無い。
「ギリギリだ、全てがギリギリなんだ。あと1歩超えれば下品になる、あと1歩少なければ物足りない。その丁度狭間に・・・」
「力説はいいですから、ヒューさん」
「また、大切なのはあの均整だ。若しどこかが少しでもズレていれば、たちまちバランスが ― 痛!」
アイネの制止も聞かず、滔々と力説を続けるヒューに拳大の石がぶち当たる。とうとう、彼女の堪忍袋の緒が切れたらしい。
「五月蠅いですわ」
もっとも、その礫の行き先が額で無く腹であることから、本気の殺意にまでは至っていないようだが。
「おう。見事見事」
その様を眺めつつ、禿頭の男は面白そうにパンパンと手を叩くとツルリと頭を撫でる。見慣れれば愛嬌すら感じる相貌もあってか、どこかユーモラスなその動きも不思議と似合って見える。
「うっ痛つ・・・何しやがる、この金髪カール女!って、あ痛!」
「ワタクシはルーサです!変な渾名で呼ばないで下さいまし!」
その鋭い言葉と共に、再び礫がヒュー腹へと投じられた。さっきより強いその勢いから、どうやら彼女にとっては適当に呼ばれる事が、肉体を品定めされる事以上に嫌いらしい。
「して、拙僧はロウトと申す一介の僧侶にて。以後、見知り置きを」
「は、はい。あ、私は、そのアイネで、あの人がヒューさん、です。よ、よろしく」
ギャアギャアと2人がやり出した馬鹿騒ぎは一旦無視して、ロウトと名乗った僧侶に同じようにアイネも名乗り返して、ペコリと頭を下げた。
「これはこれは。ご丁寧に、どうも」
「い、いえ。そ、それより・・・ろ、ロウトさんたちも、あの依頼、を?」
「ほう!となると・・・貴女らも?」
ええ、と首肯するアイネの後で、ぼわんと熱波が舞う。
「なれば・・・ふうむ、困り申したな」
「で、ですか?」
「うむ。まあ何にしても、取り敢えずは―」
「おい」
その話し合いに割り込んできたのは、言うまでも無くヒューだ。ブスブスと頭から上がる煙と焦げた臭いが、彼の身にいったい何が起こったのかを如実に表していた。
「あ、終わりました、か?」
「終わりましたか、てなあ・・・」
「フウ・・・アナタの相方も、大概ですわね」
そのヒューの後には、肩で息を吸るルーサの姿も。たかが言い争いからの喧嘩なのに、それを息切れをするほど本気で何をやっているのやらだ。
「して皆の衆、話を戻そう」
そう言って、ロウトがパンと柏手を打つ。その隣では、ルーサが何やらローブの内側から取り出した瓶の中身を半分ほど喉へと流し込む。
「うえっぷ。戻すも何も・・・何か、話してまして?」
言葉使いは兎も角、口を押さえてえずく様は何ともエレガントで無い。
「それ、何です、か?」
「え?・・・ああ、これ?ポーションですわ」
「ふうん。初めて見たな、オレも。てか・・・酷く不味そうだな」
何か可哀想なものを見るような眼でそう呟いたヒューに、「ええ」とルーサは半分ほど残った瓶の中身をチャポンと揺らして見せる。その色は、いかにも体に悪そうな蛍光ピンク。
「例えるなら・・・そうですわね、泥水で薄めた蜂蜜と年代物のヴィネガーを混ぜ合わせたような味ですわ」
その聞くだけで飲みたいとは思わなくなる味を想像しただけで、胸の辺りがムカムカする。同じように吐き気を催したらしいヒューが「ゲエ」と舌を出した、
「はい」
その瞬間、ルーサは瓶の口の液垂れを拭った指をその口へと突っ込んだ。舌に押し付けられたポーションの味に、ヒューの味覚はすぐさま脳髄へと危険信号を発する。
「!?!?!?!?」
目を白黒させて転がりまわる彼を見て、ようやく腹の虫が収まったとばかりにルーサはほくそ笑んだ。
「お返しですわ」
しかし、そんな彼女の側頭部に今度は六角棒が見舞われた。コーンという甲高い音の後、同じように「おお~」と呻きながら地面を転がるルーサ。自業自得にも程がある。
「いい加減にせぬか。話が進まぬ」
「と、取り敢えず、話をしましょう、か?」
「で、ありますな」
時は金なり。取り敢えずと頷き合ったアイネたちは、足下でのたうち回る他2人を無視して話を進めることにした。
「まず、誤解無きよう伝えておきましょうぞ。拙僧らも、貴殿らと同じ依頼を受けた冒険者でありまする。そして、あの魔物―」
「が、ガーゴイルです」
「おお!うむ・・・そのガーゴイルが馬車を襲う際に1匹を討ち、逃げ出してここまで来た。そこまでは宜しいですかな?」
「は、はい。・・・あ!ロウト、さん、その他の人、は?」
「うむ?逃げ遂せられたのは拙僧らのみと記憶しておりまするが・・・若しや、知り合いでもおりましたかな?」
「い、いえ。そういうことでは・・・」
そう答えるが、明らかに表情が陰ったアイネの肩を、ロウトはポンポンと優しく叩く。
「気になさるな。生かして攫ったとあれば、助ける余暇は残されておりましょう」
「あ、ありがとうござい、ます。・・・あれ?い、言いましたっ、け?」
「なんの、そのくらい察せれねば、それこそ僧職の看板を返上せねばなりませぬ。して・・・各々方、そろそろ現世に戻って参られよ」
その問い掛けに、他2名がよろよろとようやく起き上がった。
「うう・・・酷え目に遭った。なら、オレらの身の上も言った方が良いか?」
「そちらの事情は、先にそこなアイネ殿より伺い申したでな。委細疑うべき無しと思う所存にて、先の話をし申した」
「そいつは結構」
しかしな、とヒューは眉間にしわを寄せる。
「そのワザとらしく凝った喋り方、何とかならねえか?分かりにくくてしょうがねえ」
「わ、私も・・・その」
されど、ロウトは「はっは」と大笑すると、ギョロリと目を回し「性分故、勘弁下され」とニンマリと笑った。まるで獲物を前にした虎のような笑みだが、この男がするとどことなく恐れよりも愛嬌が勝る。
「もっとも、伝わらねば言の葉を発する意味はありませぬからな。気は付けることに致しましょうぞ」
「なら、まあいっか。て、ことは・・・」
「うむ。拙僧らの馬車も貴殿らのも同じ化物に拐かされかけたとあれば、その使役者があの依頼の依願者か・・・」
「最低でも共犯者、一枚も噛んでねえってのはあり得ねえな」
勿論、偶然というのも可能性だけはある。だが、その場合は『偶々』ガーゴイルを召喚、使役出来得る人物が『偶々』大勢の人間を必要としていたところに『偶々』他の依頼で運ばれる最中の冒険者に出くわした、となる。
それほどまでに偶然が重なることは、まずあり得ないだろう。
「して、貴殿らの目的は囚われし同胞の救出とみゆる。宜しい、拙僧らも助力致しましょう」
「ちょっと、‟ら„?」
お!?と意外そうに眼を見開いたヒューとは対照的に、ルーサは不服そうに眉を顰める。
「良いであろう?ルーサ殿も敵の首魁に接触したいのは同じ故、ならば助力しても罰は当たるまい。拙僧としても、斯様な正道に参画することは望むところであるのでな」
「・・・まあ、あのガーゴイルには興味が湧きましたから、確かにそうは言いましたけれど・・・」
「うむ、では決まった」
言い訳を述べようとするルーサを遮って、「決定」とばかりにロウトがパンと柏手を打つ。
それに対して尚も不満そうに口を尖らせるルーサであったが、アイネから「あ、ありがとう、ございます」と礼を言われると僅かに愁眉を解いた。
「ふん・・・ただし、くれぐれもワタクシの足手まといにはならないことですわね!」
「素直じゃねえなあ」
口は禍の元。そんな余計なことを言ったヒューの脹脛を、容赦ない蹴りが襲った。
「え、と。その、これからのことなんです、が・・・」
数分後、痛みに悶えていたヒューが再び立ち上がるのを待って、アイネが恐る恐るそう口を開く。
「で、ありますな。今宵の宿を如何せん、と」
少々討議が白熱し過ぎたか、いつの間にやら太陽はようよう沈み、周囲の木々も紅に染まりかけている。
「ここで野営は・・・無いか」
「左様。街道筋とは申せ、あのような死骸の傍では安眠出来ますまい」
そう言ってロウトが指さしたのは、2頭の馬の死骸だ。御者については先ほど街道脇に埋葬したが、体力的にも人手的にも馬2頭分の墓穴を掘る余裕は無い。そのため僧侶らしいロウトが形ばかりの供養をしてお茶を濁すに留めており、その傍で眠るのは流石に躊躇われる。
「それに、いつ死臭に誘われてさっきみたいにモンスターやらが襲って来るとも限らん。パスだ、パス」
「では、道を戻ってみるのが良いのでは無くて?」
当然、といった顔でルーサがそう提案するが、
「しかし、あの町から大分来たようではあるが、道中に喧騒の覚え無し。とあれば、どこまで戻れば良いのか検討もつかぬな。ならば・・・」
「死骸が無い以外は、ここで野営すんのと変わらねえってことか?なら却下だ」
あっさりと却下され、ならば結果は1つ。
「先に進む・・・しか無いか」
「でも、それでは戻るのと同じでしょう?せめて、野宿に適した場所でも分かりませんと―」
「あ、分かりますよ」
今まで一向に話に入って来なかったアイネが発した、それもあまりにも意外なその一言に、思わず全員の視線が集中する。
「ひ!す、すすすすすすすみませんゴメンナサイ」
「いや謝罪はよいが・・・どういう話かな?」
こんな時、頼りになるのは年の功と言うべきか。噛みつきそうな2人を押さえ、ゆっくりと話しかけたロウトに落ち着きを取り戻したアイネは、
「え・・・と。あの、私たちの馬車はあそこで襲われたん、です」
拙いながらも、一言一言を噛み締めるよう伝えだす。
「で・・・え、えと、ロウトさんたちは、ど、どこで襲われました?」
「ふむ、どこと問われれば難しいのですが・・・少なくとも、拙僧らはここまで一直線で逃げて来ましたぞ」
「ああ、成程。要するにアレかアイネ、こことその地点を結んだ先に、敵の野営地があると」
コクンと頷いたアイネに、ルーサが「でも」と口を開く。
「あのガーゴイルとやらがどこまで飛んで行ったかなんて、分かりませんことよ」
「で、でも、その。ええと、ガーゴイルはあまり遠くまで飛べないんです、よ」
「加えて、今は馬車を担いでおるなら、その飛距離は更に短かかろう。畢竟、そこそこの距離に野営地が在ろう、という次第。うむ・・・・・・筋は通りますな」
だが、まだ合点がいかない様子のルーサは、条件反射のように反駁する。
「しかしですわよ。仮にそうだとして、そこが野宿に適しているとどうして分かるんですの?」
「ルーサお前・・・ひょっとして馬鹿か?」
その直截な言い方に「んな!?」と顔を朱に染めたルーサと、それを言ったヒューの間に第2ラウンドの幕が上がるかと思われたが、
「まあまあ、ルーサ殿。そう問うてばかりでは、そのそしりは甘んじて受けるべきであろう」
ロウトがガッシとその武骨な手で2人の肩を押さえつけたので、幸いなことに未遂に終わった。
「でも!」
「でも、でもヘチマでも無い。考えてもみよ、敵がどのような目的で彼らを攫っていったかは分かり得ぬが、殺して行かなかったとなればそれは予定のことと見るべき」
「で?」
ぶすり、と不満げに口を尖らすルーサへの解説―と言うより教示―をヒューが続けて、
「だからな。そこまで長く飛んでらんねえ化け物に、着地しては離陸、着地しては離陸ってして運ばすか?」
「あ!」
「そう言うこった。なら、どっかで1つに集めて運ぶ方がロスが少ない。な、考えりゃ分かんだろ?」
付け加えて言えば、そうならばその場所は広く開けている筈だ。少なくとも、数台の馬車は置けるくらいには。
「しかしですわよ。その『あまり飛んでいられない』というのは、彼女の1意見でしょう?信用出来ますの?」
ジロリ、と鋭い視線を投げかけられ、怯えるようにキュッと肩を狭めるアイネ。それを見て「どう?」とドヤ顔で他2名へと投げかけられた視線は、言葉よりも雄弁だ。
即ち「これを信用できるか」と。
「ああ」
「であるな」
されど、その2名はアッサリと首肯する。それにはむしろ、アイネの方が驚いた。
「ちょ、ちょっと!?」
「んだよ?」
「信用できるんですの?アレを?」
指さされたアイネも、「そうだそうだ」と言わんばかりにコクコクと大きく首を振る。会ってこの方、このルーサという人と意見が合ったのは初めてかもしれない。
「別に信用出来た訳では御座らん。だが、筋は通っておる故、信用することにした。それだけのことであるな」
「オレは勘だ」
「でっかいのは兎も角、勘って・・・アナタ、真面目に考えてますの!?」
「オレは大真面目だ。それより・・・」
ぐい、とヒューがアイネの細腕を掴み引き寄せ、よっせとロウトがその大きな肩の上に抱き上げた。咄嗟の事態に、アイネは慌ててロウトの禿頭にしがみつく。
「別によ、コイツが気に食わないんだったら、付いて来なくても良いんだぜ?」
「左様左様。拙僧も、あの時は助けられるから助けたまでの事。ここからは別行動となって、仮に死されても悔いは御座らん」
まるで掌中の珠のようにアイネを担ぎつつ、ニマニマとした笑みでそう述べるロウトの顔はいかにも愉快そうである。それをプルプルと震えつつ俯いたままのルーサに、嗜虐の気持ちがムクムクと沸き上がったヒューも、それに乗っかるように茶々を入れた。
「そうだそうだ。じゃルーサ、オレたち先急ぐから。死ななかったらまた会おう―ウグファ!」
だが、残念ながら彼は許されなかった。蹴りつけられたむこう脛を押さえ蹲るヒューの背中をルーサはグーで叩くとフードを被り直す。
「仕方ありませんわね」
いかにも不平、といった表情でそう言うとアイネを指さし、
「でも・・・良いですこと、アイネ!」
「は、はい!」
「ワタクシは別に、アナタを信用した訳ではありませんことよ!」
それだけ言って、ルーサはズカズカと大股で皆を置いて歩いて行く。先を行く彼女をポカンと見ていたアイネだったが、「良いですか、アイネ殿」という声に抱える頭に目をやると、ロウトが愉快そうにウィンクを飛ばしてくる。
「憶えておくと良いですぞ。あれが俗にいう『ツンデレ』という奴にて」
「止めろよオッサン。あんなのじゃ萌えねえよ」
そう言ってギョロリと目玉を回すロウトの言いざまも、不承不承といった顔で呟くヒューも可笑しくて。
「・・・ふふ」
思わず、アイネの口からも小さな笑いが零れた。
「ちょっと、聞こえてますわよ!」
そして、両手を振り上げて抗議するルーサもまた可笑しくて。だから、アイネは出そうになる笑いを堪えながら、叫んだ。
「そ、そっちは逆です!」
その後、揃って爆笑した男衆に対して業火がご馳走されたことは、まあ言わなくても良いことだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます