甘々注意報 1

 あれからわたしは、毎日、参謀ベティーナさんの手によって飾り付けられていた。

 最初は不思議がったリヒャルト様も、二日目、三日目と経つ頃には何も言わなくなって、なんか、着飾るのが当たり前になりつつある。


 ……でも、さすがは参謀だわ! リヒャルト様の様子が以前と少し違う気がするもの!


 初日こそわたしが(というよりはアルムさんとベティーナさんの見事な連係プレイだけど)お誘いしたお散歩だが、次の日からはリヒャルト様が誘ってくれるようになった。

 お昼前の、リヒャルト様の休憩時間はお散歩タイムが定着しつつある。

 あと、ちょっと気になるのが、リヒャルト様がふとした拍子にわたしに触れるようになったことだ。

 以前から外出の際に手は繋いでいたけれど、リヒャルト様は最近、わたしの口元にもよく触れるようになった。


 ……まあ、わたしが口の周りにお菓子の食べかすをつけているのが原因ですけどね!


 自分では気が付かないのだが、リヒャルト様が触れてくる頻度を考えると、お菓子を食べるたびにわたしは口の周りを汚すようである。


 ……うーん。神殿暮らしのときみたいに口の中いっぱいに食べ物を詰め込んだりしていないはずだから、口の周りもそれほど汚れないと思うんだけど。わたし、食べ方がへたくそなのかなあ?


 そうそう、それから、わたしは今、サリー夫人からダンスについて学んでいるんだけど、ダンスの種類だとか歴史だとかを勉強し終わったので、実践練習が今日からはじまる。

 なんと、その練習相手をリヒャルト様が務めてくれるらしい。

 リヒャルト様、忙しいのにいいのかなあって思ったんだけど、ベティーナさんによると、これはとってもいい傾向なんだとか。


 ……このまま頑張れば、きっとそのうちリヒャルト様から結婚を申し込んでくれるはずだってベティーナさんは言ってたけど、本当かなあ?


 いえ、参謀の言うことを疑っているわけではないんですけどね。

 あと、当初はわたしが跪いてお願いし倒すつもりでいたのに、いつの間にかリヒャルト様から結婚を申し込んでもらう方向に作戦がシフトしているのはどうしてだろう?

 でもまあ、わたしが申し込んだ場合は断られるというリスクがあるので、リヒャルト様から申し込んでくれる分には全然問題ない。むしろウェルカムだ。


 もし、問題があるとすれば。

 あの日から、リヒャルト様に触れるたびに心臓がどきどきざわざわして恥ずかしくなる、わたしの方だろう。

 うーん、急に出はじめた症状だけど、何かの病気とかじゃあ、ないよね? 不安です。




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