第37話 『帝都最後の日』/レオ

       ◆ ◆ ◆


「皆様、ご機嫌よう。本日もお日柄よろしくて」


「ロセナラ様、ご機嫌よう。今日も一段とお美しくて」


 帝都城の中庭にて、貴婦人らと優雅に茶会を開いているロセナラ。公爵家は『追放』されたもののレオを連れ戻し、皇帝から一定の扶助は得られている。


 これで遠征中のレオが勝てば、見事に返り咲くことができる。そして、念願のレオとの『婚約』もついに成就される。なので、ロセナラは有頂天だった。


「ええ。本日は『人生最高の日』となるでしょう。オーッホッホッホッホッ☆」


 絶頂を迎えるロセナラ。その時、皇帝の側近が現れロセナラに駆け寄った。


「御免。ロセナラ嬢、陛下が至急戻れと仰せです」


「優雅な一時でしたが……陛下のお達しでは仕方ありませんわね。では皆様、どうぞごゆるりと」


 マイペースなロセナラ。既に『破滅』に片足を突っ込んでるなど、露知らずに。


 ◇ ◇ ◇


「陛下、ロセナラ・へクセ……」


「やっと戻りおったか! ロセナラよ、これはどういうことかっ!?」


 ロセナラの顔を見た瞬間、皇帝は憤激した。いくら何でも短気過ぎるだろ、このボ○ジジィ……ロセナラは辟易へきえきした。


「へ……陛下、落ち着いてくださいませ! 急に言われましても、なんのことやら……」


 皇帝は「アレを見よッ」と巨大な水晶玉を指差した。ロセナラは、我が目を疑った。何故シャルジャに発ったハズの帝都軍が、王宮を包囲・・・・・しているのか……?


「へ……陛下、これは一体っ!?」

「それをワシが訊いておるッ!」


 押し問答を始める二人を尻目に……


【諸君。余はベオグラード皇子レオ】


 全土に響き渡る、魔術で拡声したレオの声。皇帝とロセナラは、顔を見合わせた。まさか『トンボ帰り』するなど思わなんだ。


【余は永きにわたり続いてきた、帝都の『一極主義』に終止符を打つ決断をした。我が『同胞』と共に旧時代の支配を終わらせ、余は『始皇帝』として即位することをここに誓ふ】


「なななな……何を言っておるのだ皇子は? ロセナラ、通訳せい!」


 人語も理解できなくて? この耄碌もうろくは?


【王宮の者に告ぐ。速やかな降伏を推奨する。さすれば余の名にいて、命の保証はする。只今より半刻(30分)待つ。賢明な判断を期待する】


「「……………………」」


 レオからの通信が途絶え、謁見の間は静まり返った。特にロセナラは焦った。レオの『反逆』は頭の片隅にはあったが、如何いかんせんタイミングが悪すぎる。


 この皇帝ジジィが、下手にレオを煽るからこうなるのだ。何が上手くやれだ。お前自身が一番当てはまるだろ。


「……えぇいロセナラよ! こーなったら、ワシが逃げ切るまで時間を稼げッ」


「……ハァ!? なんでそーなりますの!? そもそも皇帝のアナタが、いの一番に逃げ出して……」


「誰にクチを利いておるッ!? タダ飯食らいが、ワシの身代わりすら務まらんかッ!?」


――ブチッ


 ロセナラの中で、何かが切れた。


「このハ○ェええええっ! 違うだろ、ち・が・う・だ・ろぉおおっ!? ちゃんと私の『筋書き』通りに動けや!? イキてる価値ねーだろ老●っ! これ以上私の評判を下げるなっ、私の心を傷つけるな! 違うだろっ違うだろ、ろろろ~ハ○っっ」


 延々と続く『責任転嫁』の応酬……刻々とタイムリミットは迫っていった。てか、もう何もかも遅いのだが(合掌)




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