第35話 『反逆のレオ』/レオ

      ◆ レオ視点 ◆


 数万規模の帝都軍……既にシャルジャ領に入り、宮殿まで約10kmと肉薄した。


 沈痛な表向きの兵ら……総大将のレオが命令すれば、後は『突撃』あるのみ。


 生きて故郷くにへ帰れるのは、ほんの一握り……仮に『生存ガチャ』を引き当てたとしても、次の『遠征』が待っている。


 全ては皇帝の『気分』次第……帝都兵らは、疲弊しきっていた。今回は誰が生き残るのか? また家族の顔が見れるのか?


 各々の緊張が、ピークに達するも……いつまでも『突撃』の命令は下らない。不審がる兵士ら。


「……っ!? 副将、アレは……!」


 兵士が指差す方向に一つの影。一瞬『敵』かと思ったが、見知った者だった。


「レオ皇子っ!? 何をして……」


 副将は我が目を疑った。なぜ『総大将』のレオが、こちらを向いているのか・・・・・・・……?


「皆の者、聞け」


 静かだが『威厳』に満ち溢れた声で、レオは帝都兵へ語りかけた。


は皆と共に、大陸の至るところへ歩んだ。その都度かけがえのない『仲間』をうしない、絶望に打ちひしがれた」


「……皇子、何を申されたいか?」


 副将はいぶかしげだ。ガイオスが、レオの『盾』なら副将は『剣』だ。


「もう哀しみに明け暮れることはない。余は諸君ら誰一人、犬死にさせることはない。そして、真なる敵はシャルジャにあらず……!」


……ざわ……ざわ……


 副将が鎮めようとするも、レオはこれを手で制した。


「皇子。まさかとは思うが、その『敵』というのは……」


「察しの通り、帝都・・だ」


 ざわめきが、一気に大きくなった。副将も大きく目を見開いた。


「本気……なのですか?」


「無論だ。今こそ『悪しき』皇帝より、自由を勝ち取るのだっ!」


 熱弁を振るうレオに、兵らは顔を見合わせた。


「皇子よ……『言うがやすし』だが、帝都は一筋縄にはゆかぬ相手ぞ」


「百も承知。故に余は、帝都に対抗し得る『力』を示す」


 レオが右手を天にかざすと、虚空より一振りの『剣』が舞い降りた。あらゆる武具を納めている『王の蔵バビロニア』より取り出したのだが、それは『剣』と呼ぶにはいびつ過ぎた。


「これは『真の王』のみが持ち叛逆剣へーパイストス。神話の刀匠が打ち込み、悠久の刻をて目覚めた。余がこれを手にする時、天下を獲ったも同義」


 レオはおもむろに『叛逆剣』を振るう。


「そして、これが『審判の光』だ。熾天降臨メガフラッシャー……!」


――ゴワァアァアアアアアアアアッッ!!


 猛烈な光の奔流ほんりゅうが砂漠を突っ切り、海を真っ二つにした! 総員、茫然自失となる。


「なっ…………これは……」


「……出来れば、使用つかいたくなかった。だが、余は今こそ『自由』の為にとうぞ!」


 レオのその一言に一人……また一人が拍手をした。やがて、それは大きなうねりとなり誰もがレオの『英断』を喜んだ。

 最早、怪しい薬やロセナラの『魅了』すら届かない。皇帝は、致命的な『間違い』をおかした。


 その気になれば、レオだけでも『戦争』に勝てる。そのレオに『同じこころざし』を持つ兵を与えれば、世界を変えることすら出来る。


親指を立てろ、兵士よサムズアップ、ソルジャー! 我らの『未来』は約束された!」


――ARYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!



 疾風怒涛で、帝都に引き返す『王の軍勢』……歴史が変わる瞬間だった。

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