第33話 『破滅』への秒読み /レオ

      ◆ レオ視点 ◆


――帝都中央。


 広場は数万規模の騎兵で、埋め尽くされていた。ちょうど『旗揚げ式』が終わり、総員が戦意高揚状態だった。


 前日の『決起集会』で、料理に怪しい薬物をこっそり盛っていた。これにより『恐怖』より、興奮が上回っている。


 皇帝にとって、全ての兵は『捨て駒』に過ぎない……レオは悟られずに歯噛みした。


「勇敢なる帝都兵諸君! シャルジャは隙あらば、帝都に攻め込もうとしている危険な国なりッ! 国の平和、敷いては諸君らの家族の為に奮起してもらいたいっ!」


 調子のいいことを言って、適当に兵を鼓舞する皇帝。レオは出陣用の『仮面』を被り、出陣の報告をする。


「陛下。帝都軍、シャルジャへ赴きます」

「ウムッ、吉報を期待しておるぞ!」


 受かれている皇帝にレオは、仮面越しに低い声を出した。


「ええ。陛下のご希望通り、速やか・・・に戻って参ります」


 ◆ ◆ ◆


「行きよったか。フフ……『健闘』を祈るぞ、レオ」


 皇子を見送ってから、皇帝はほくそ笑んだ。


「ええ。これで帝都の体制は、磐石ですわ」


 ロセナラもほくそ笑む。多少の『計算違い』はあったものの、ほぼ『計画通り』だ。やっと、自分が報われる時がくる。

 ここまで皇帝に少しずつ、魅了を掛けてきた。なかなかしぶといオヤジだったが、後はレオが凱旋時に『婚約』する算段だ。


「ククク……シャルジャさえ潰せば、この大陸で帝都に刃向かうものなしッ! それに帝都には、秘密兵器ありケリ」


 秘密兵器? ロセナラも聞いてない。


「陛下……『秘密兵器』というのは?」


「ウン? まー公爵家からは、多額の融資をしてもらったからのぅ。特別に教えよう……地下施設に、対殲滅せんめつ用決戦兵器『神の雷ICBM』が眠っておる。アレならどんな国もイチコロよ」


……このジジィは、何を言ってるのかしら?


 流石のロセナラもドン引きした。


「お待ちください、陛下! レオ様が現地にいるのに、そんな物騒なモノを発射すれば……!」


「ウン? だからワシは、上手くやれと言った。要するに克てば良し、敗けても良し、相討ちでも良しと隙が生じぬ三段構えじゃ」


 ダメだコイツ、早くなんとかしなきゃ……ロセナラは内心、舌打ちした。こうなったら、レオが勝つのを祈るしかない。


(イーグル、悪く思わないでちょうだい。貴方は運が悪かっただけですわ)


 まるで他人事ひとごとのロセナラ。だが、事態は二人の想定外に傾き『破滅』への秒読みカウントダウンが始まった。

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