第32話 『彼』に会いたい /ヒメナ

 レオが私の元を去ってから、三日が過ぎた。いま私は、イーグルの宮殿にいる。我ながら、何やってんだろ? と思う。


「ヒメナ。ここでの生活は気に入ったか?」

「そうね……まだ何とも言えないわ」


 イーグルに訊かれ、私は適当にはぐらかした。『あれから』イーグルは、私に親切にしてくれる。

 尚もイーグルは何か言ってるけど、私は今後どうするか『脳内会議』を始めた。


――(私A)どうしよう……まさかこんな事になるなんて。


――(私B)私は……レオ様に会いたい。会って『真相』を確かめたい。


――(私C)それは『みんな』同じだよ。ロセナラは、連れ戻しに来たとか言ってたけど。


――(私D)じゃあ、次に『やるべき事』は決まったね。目指せ『帝都』! まずはシャルジャを出ないとね。


「……ヒメナ」

「え……?」


 イーグルに呼ばれ、私は我に返った。


「今の話……ちゃんと聞いてたか?」

「あーごめん、何だったっけ……?」


 訊き返す私にイーグルは、若干嘆息しつつも真剣に言い直した。


「今夜、財閥のグループが集まって懇親会パーティーを開く。ヒメナにも是非、参加してもらいたい」


 パーティー……そんな気分じゃないけど、立場上断れないよね(-_-;) 私は『適当』に切り抜けることにした。まさか『あんな展開』になるなんて……


 ◇ ◇ ◇


――その晩。


 おごそかな雰囲気に包まれた宮殿は、ターバンを巻いた人たちで埋め尽くされた。金歯や高価そうな指輪を五本身に付け、富豪の集まりだけのことはある。


 夜空にはいろどりの花火が打ち上がった。侍女じじょによりめかし込まれた私は、適当に『社交辞令』を済ませていた。


――バッ!


 な……何っ!? 急に目の前が、明滅した。明かりが消えたかと思ったら、私にスポットライトが当たった。

 ちょっと、やるなら先に言ってよ。目がチカチカするじゃん(`ε´ )プンプン


 そして、もう一条の光。そこには、派手に着飾ったイーグルが照らされた。イーグルは私に手を伸ばし、「レディ。お手をどうぞ」とダンスに誘う。


 会場は薄暗いけど、皆が私たちに注目している。私はイーグルの手を取った。あくまで『社交辞令』だもんね。


 皆が注目する中、私たちは優雅に舞った。けれども……『私の心』は、イーグルを視てなかった。

 この手がレオなら、どんなにいいことか。今、どうしてるの? 『彼』のことを考えると、胸が締め付けられた。


 待ってて……レオ。すぐに会いにいくよ。


 ダンスが終わり、惜しみ無い拍手が湧いた。会場全体が、私たちを『祝福』してるように感じた。

 あの時とは『真逆』だな……婚約を破棄された日は、冷ややかな視線と嘲笑を浴びた。


 するとイーグルはおもむろに片膝をつき、小箱を開けた。中の指輪が、キラリと光った。


 え…………? なんのつもり……?


「ヒメナ。今宵、貴女に『婚約』を申し込む。オレと共に歩んでくれ」

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