第2話 紅茶
そろそろ、行こう
二人の間が、そういう空気になった。
その日、二人は、近くの図書館で、一緒に勉強しよう、ということになっていた。
彼女は、精神保健福祉士の資格を、ぼくは、介護福祉士の資格を取得する約束になっていた。
公園を出た。細い道を通る。道にある、ひなたと、日陰。通りすぎるひとたち。手もつながず、図書館へと向かった。
パン屋さんの前を通った。
「いい匂いがするね」
彼女が言った。
「ほんとだ!とてもいい匂い!ジュースでも買ってく?」
「寄り道するの?さっき、おにぎり食べたばっかだよ」
「うん。なんかさ、パン屋さんのパックのジュースって、自販機で売ってるジュースより、美味しいと思わない?」
「ジュースだけ買うんだ」
「そう!」
パン屋にはいった。
客でいっぱいだった。はぐれないように、また、彼女の手を握った。ラッキー!と、胸が踊っていた。
「コーヒーでいい?」
たずねてみた。
「紅茶がいい」
と彼女が言った。
紅茶をふたつ、レジに持っていった。レジはならんでいた。なかなか、前にすすまない。ぼくたちは手をつないでいた。もう片方の手で、パックの紅茶をふたつ、安定感をくずしたら、落ちそうだ。
少し、彼女を握る手をゆるめた。すると、彼女は、ぼくの手を強く握ってきた。
場もわきまえず、照れた。
「顔が赤いよ」
彼女が、ぼくの顔を見て、くすくす笑った。
レジで、お金を払い、パン屋を出た。
「これ、どこで、飲むの?」
「歩きながらに決まってんじゃん」
紅茶のパックを飲みながら歩く二人が、細い道をでて、車の走る道に出ようとしていた。
「ねえ、もう少し、ゆっくり歩こうよ」
「そだね」
カラになった紅茶のパックをふたつ、道路に出る、曲がり門においてあったくずかごへ、一緒に捨てた。
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