話は署で聞こう

いまさらのように気づいたがビアクの日本語は些かたどたどしく外人訛りがあった。警官は鎖と手錠が付いたダンベルを、すなわちビアクが云った通りの状況を念入りに検分したあとで「よし、わかりました。それじゃあこのダンベルはこのままにしておいて」と告げビアクと共に私の元へと戻って来た。私は左足の踵やら横膝のあたりを蹴られまくれビアクと警官に付いて行くことさえ憚られていたのだ。もとより顔面は始めの男からの一発に加えて何発も喰らったので相当腫れあがっているのが容易に分かる。その私に「旦那さん、だいじょうぶ?歩けるかな」と聞くのに、いまさらそれに気づいたかのように山倉がすぐに降りて来てくれた。改めて私の顔を労し気に見ながら「おいおい、だいぶやられたな。田中さん。だいじょうぶかや。じゃあさ、何とか上まで行こう」と云って肩を差し入れてくれる。すばやくビアクが私の身体の右側に来て同じようにしてくれた。2人のお陰でビッコを引き引きしながら私はなんとか堤の上まで辿りついた。そこでは男らが残った警官に散々ぱら文句を垂れている。それへ「まあまあまあ。とにかくあんたら全員署まで来てもらうことになるから。話はそっちで聞こう。いいね」と、ダンベルを検分した上役格の警官が告げ、さらにいま1人の警官に「署に応援を要請してくれ。鑑識と護送車、それに…」などと告げてその警官をパトカーへと向かわせた。しかし主犯格の男が文句を云う。




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