警察到着

「野郎!」とばかり山倉と対峙していた男が加勢に降りて来ようとしたが「おいおい、お前の相手はこっちのクモ助さんだよ」と云って男の腕をつかむ。再び「野郎!」と叫びざま山倉めがけて男が殴りかかるが山倉はひょいひょいと器用に身をかわして(さきほどの私と違って)男のパンチを一発も身にあびない。方や私の方は蹴られたり殴られたり悲惨だったがどうでもダンベルを川底に沈めさせる分けには行かず、必死になって男の身体にすがりついていた。するうちにウ~とばかりパトカーのサイレンが一度鳴って堤上の女性が「パトカーが来たわよ!止めなさい!」と大声を出してくれた。「おい、止めろ!もういい。こっちへ戻って来い!」と山倉とやり合っていた男が私を蹴っていた男に声をかける。その男は「痛っ(いてっ)」と一声発してから私に加勢に来てくれていた今1人の女性を押しのけようとする。しかし最前ビアクと呼ばれたその東南アジア系の女性は「てめえ、この野郎」と罵倒しては男を蹴り上げるのを止めない。「ビアク!もう止めて!警察が来た」堤上の女性の声で止めたが「おお、痛(い)てえ。このアマ…」と男の方は毒づきながらも応戦はせず、私を振り払ってから足を引きずって堤の上へと戻って行く。「こっちでーす!来てください!」と呼ぶ女性の声を受けて警察官2名が警察ライト(照度が強い警察・防衛用懐中電灯)を照らしながら堤の上へと上がって来る。山倉に打ちかかっていた男が上って来た相棒に目配せしてから「おい…ふりをしろ」と小声で云い、自らも腕をさすりながら苦痛の表情を浮かべてみせる。

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