爺さん2人、格闘する

云い返そうとする私を制して「いや、そうも行かないんだ。この人たち(つまり女性2人と私)の話を聞くとお宅の挙動にはどうにも不審な点がある。納得する説明を聞かないうちには渡す分けには行かないな」と山倉が応じるのに「なんだとお?…てめえは何だ?!ただのクモ助だろ!余計なことに首を突っ込まねえ方が身のためだぞ」といかにもヤクザ然とした風に脅しをかけながら「おい」と首をふっていま1人の男に何事かを指図する。「おう」と応じた男が土手を下って川沿いのプロムナードへと降りて行く。しかし男らの意図をすばやく察知した、幼女を抱いている女性が「とめて!その男をとめて!ダンベルを川に沈めるつもりよ!」と鋭い声を上げた。私はすばやく追いすがり男に組みつく。「てめえ」一声あげて男が私の両襟首をひっ掴み足払いをかけて地面に倒した。年甲斐もなく云いわけしたくないが私はこれでも若い頃には柔道をやっていてバランス力は人一倍あった。相撲も強かった。しかし件の長、年にわたる(何と20年以上!)ストーカー災禍のおかげで9年ほど前にとうとう私はガンを患い(胆管ガンだった。胃とすい臓、十二指腸の一部も切除した。切除した胃の代わりに腸を一部切り取ってつないであるのだ。手術は9時間に及び正真正銘命の危機だった)、以後はバランスがいいどころかちょっとした弾みで身がこけてしまうような身となっていたのだ。ここでも同様だったがしかし私は倒されても必死に男の足にすがりついて放さない。

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