爺さん2人、格闘する
云い返そうとする私を制して「いや、そうも行かないんだ。この人たち(つまり女性2人と私)の話を聞くとお宅の挙動にはどうにも不審な点がある。納得する説明を聞かないうちには渡す分けには行かないな」と山倉が応じるのに「なんだとお?…てめえは何だ?!ただのクモ助だろ!余計なことに首を突っ込まねえ方が身のためだぞ」といかにもヤクザ然とした風に脅しをかけながら「おい」と首をふっていま1人の男に何事かを指図する。「おう」と応じた男が土手を下って川沿いのプロムナードへと降りて行く。しかし男らの意図をすばやく察知した、幼女を抱いている女性が「とめて!その男をとめて!ダンベルを川に沈めるつもりよ!」と鋭い声を上げた。私はすばやく追いすがり男に組みつく。「てめえ」一声あげて男が私の両襟首をひっ掴み足払いをかけて地面に倒した。年甲斐もなく云いわけしたくないが私はこれでも若い頃には柔道をやっていてバランス力は人一倍あった。相撲も強かった。しかし件の長、年にわたる(何と20年以上!)ストーカー災禍のおかげで9年ほど前にとうとう私はガンを患い(胆管ガンだった。胃とすい臓、十二指腸の一部も切除した。切除した胃の代わりに腸を一部切り取ってつないであるのだ。手術は9時間に及び正真正銘命の危機だった)、以後はバランスがいいどころかちょっとした弾みで身がこけてしまうような身となっていたのだ。ここでも同様だったがしかし私は倒されても必死に男の足にすがりついて放さない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます