第7話 Singin’ in the Rain
カナが新しい傘を買ってきた。
紺色で無地のように見えるけど、ぱっと開くと中には星が散りばめられていて、ちょっとしたプラネタリウムみたい。
けど、そんな時に限って、雨が降りそうで降らなかったりする。
僕はどっちかというと、雨は苦手だ。
傘を持ち歩くのはメンドーだし、バスや電車の中でもジャマでしかない。
何より・・・・自転車で来れない。
カナと話す時間が減る。
雨降るな。
しかし。
ここに「自転車二人乗り」に並ぶ、ひそかな野望が目を覚ます。
「あいあいがさ」。
実に魅惑的な響きじゃないか。
小学生の時だったら、まわりからからかわれるだけだったが、
今や「勝ち組」としてちょっと優越感にひたれる、アレ。
カナと合法的(?)に肩を密着して歩くことができる、アレ。
・・・悪くない。
雨よ、降れ。
しかし、朝はバス停から学校まで徒歩3分、おまけに人が多すぎてさすがに無理。となると帰りしかないがさてどうやってそのシチュエーションに持っていくべきか・・・・
なんて、自分勝手にあれやこれや考えてたところ、
ついに来ました、その時が。
「お待たせ、待った?」
「いや、大丈夫」
「雨あんまり強くないけど、やっぱり降ってるね」
「あんまり強いとビチャビチャになるからなあ」
「ほら、このカサ、かわいいでしょ?」
「そうだねえ」
「・・・・なんでカサたたんでるの?」
「いや、こうしたほうがよく見えるし?」
「もー・・・肩濡れるよ?」
「大丈夫。これもオトコのロマン。だったらもうちょいくっついて?」
「これでいい?」
「バス停今日は一つ先まで行こうか?」
雨、アリガトウ!!
でも、もう少しだけ、弱く降ってくれない?
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