第8話 今日の予報は キャッチボール 後・・・・・
カナと付き合い始めて初めての春休み。
今日はカナの家に遊びに来ている。
ちなみに僕の家からは結構・・・かなり遠い。
自転車で1時間くらいはかかる。
でも、それがなんだというのだ。
春休み中にカナに会える。
それだけでも1時間使う価値がある。
しかも私服。
おつりがくる。
いや・・・この場合「もっと払う」、か?
それにしても。
女の子の部屋って、なんでこんなにキレイなんだろう?
僕は弟と二人で部屋を共有している(その分広いけど)ので、
ちょっと油断すると、足の踏み場がなくなる。
冬はこたつで寝てしまうこともあるが、
起き上がったらヒトの形に物が置いてある、ってこともあるくらいだ。
間違っても彼女を連れていける環境ではない。
というか、まだカナのことは親に言ってない。
イロイロ言われそうでめんどくさい。
なので今日も「友達と遊んでくる」と言って家をでた。
いつかうちに呼ぶことがあったら、片付けよう。
「ねー。キャッチボールしよー?」
カナはソフトボール部だ。でも部員がほとんどいないので、休部状態に近い。よく耐えてると思うし、僕が気になりだしたのも、元はと言えばグラウンドで友達と二人で落ち込んでいる姿を見たことからだ。
「OK。でも久しぶりだから、うまくできるかなあ?」
「だいじょぶだいじょぶ!近くに公園があるから行こう!」
というわけで、近くの公園へ。
しばらく肩慣らしをしながらゆっくり投げる。
グローブ付けたのって小学生以来かも。
「ありゃ、ちょっと逸れたゴメン!」
「おっけー!」
さすがにカナは上手だ。あんまり野球が上手な女子とは接したことがなかったので、ちょっと新鮮な感じ。
で、しばらくして休憩。
カナの案内で、公園内の小高い丘に登る。
そこにはベンチがあった。
座ると風が吹いて、気持ちいい。
ふと隣を見ると、ちょっと汗ばんだカナが、
久しぶりにキャッチボールができたからか、
笑顔で景色を見ている。
化粧っ気なんかかけらもない。
だけど、綺麗だと思った。
「カナ?」
「なあに?」
「あのね」
好きだよ。
「ん・・・」
びっくりした顔。
でも、もう一度。
目を閉じる。
春の風が吹いている。
木漏れ日が揺れている。
どこかでうぐいすが鳴いている。
一瞬だけど 一瞬じゃない、
そんな時間。
「・・・いこっか」
「・・・うん」
後日、新学期にカナからもらった手紙には、最後にこんな言葉が。
「顔が熱いよ・・・・
真っ赤っか・・・・です。」
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