第6話 初デートその4 左ひじに名残



昼ごはんのあとは。


アーケードをぶらつきながら、手当たり次第に目につくショップに飛び込む。

何せほとんど初めての経験なので、見るもの触れるもの全てが新鮮。


・・・たまにナゾの表札屋とか、わけのわからん段ボールのオブジェ?住居?があったり。

なんか〇〇太郎って何なの??


3時のおやつ?で、「G フルーツ」なるジュースパーラーに連れてかれる。めっちゃおいしいけど、1杯500円以上!? 


いや高えっ・・・・!


とは、口が裂けても言えないのが悲しいオトコの見栄。

無駄遣いせんで金貯めておかないと。




もうすぐ夕方の5時。

お互い市内からは離れたところからきてるので、そろそろタイムリミットだ。


バスセンターに戻り、3Fのバス発着場に直通のエスカレーターに乗る。

僕とカナは別々のバスに乗らないといけないから、ここでお別れになる。


バスの時間を調べ、カナの乗るバスの発着場へ行く。

彼女を残して先に帰るとかあり得ませんっ!!!


夕方時なのでバスは5分も待たずに次々と出発する。

列に並んでる間はずっと横並びで話をしていた。


並んでいる人がバスに乗っていく。

カナが乗る順番が来た。


「じゃあ、また明日ね」


「気をつけて。また明日」


カナが僕の左ひじから手を離し、バスに乗っていく。

こちらが見えるよう、カナは左側の席に座り、こちらを見つめる。


少しだけいつもと違う笑顔。

でも僕はその笑顔を知っている。


学校帰りに、自転車で別々の道に分かれるときの顔だ。


バスがゆっくり動き出す。

カナと手を振りあう。


バスが見えなくなってから、自分の乗るバス停に向かう。

左ひじには、カナがつかんでいた感覚が残っている。


バス停に並びながら、ひじを触る。

明日になれば、また学校で会える。

わかっているけど、それまでの時間がもどかしい。




家に着いたら、明日渡す手紙を書こう。

今日の感想と、次のプランを考えながら。

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