魔法使いの弟子−4
ベスは魔法協会に来た時に乗っていた馬車を協会に置いて、協会の馬車で一緒に移動している。
七人も乗っているのでかなり大きな馬車だ。
二つの馬車にするかという話も出たが、せっかくなので七人で乗っていく事になった。
協会は街の中心部にあるが、冒険者ギルドは海とは反対の陸側の出入り口に近い場所にあるらしい。
歩くと距離を感じるとのことだが、馬車であればすぐだとケネスおじさんが教えてくれた。
「ここが冒険者ギルド?」
「そうだ。懐かしいな」
馬車から順番に降りて、ギルドの建物を見上げる。
協会ほどの大きさはないが、周囲の建物より随分と大きい。
出入り口から多くの人が出入りしており、武器を持っている人から商人のような人まで見かける。ギルドを利用する人は多いようだ。
ギルドの中に入ると受付が多く並んでいる。
受付に並んでいる人から、冒険者が利用する受付かどうかが何となく予想できた。
俺たちはどこに並ぶのかと思っていると、一目で獣人だと分かるサイの見た目をした人が近づいてきた。
「エリザベス様、テレサ様。本日はどのような用事ですかな?」
「ライノ殿。エリザベス様のギルド登録がしたいのだが、少し話せるだろうか?」
「分かりました。部屋に案内します」
テレサさんが事情を説明すると、すぐに個室へと通された。
個室に入ると、テレサさんがベスのギルド登録をする許可をもらっていることと、ダンジョンへは魔法を覚えてから入ることを説明している。
ライノと呼ばれた獣人は許可が出ているのなら反対をする理由はないと返している。
テレサさんがギルド登録をする時の条件として、俺とドリーが一緒に行動する事になると説明した。
テレサさんによって俺とドリーが紹介されると、ライノと呼ばれた人が俺とドリーに挨拶をしてきた。
「冒険者ギルドの職員でライノという。元々は冒険者だったので言葉遣いが悪いが許してくれ」
「平民なので気にしないでください。俺はエドワードと言います。エドと呼んでください」
「ドリーはドロシーって言うの」
基本的に見守っているだけのケネスおじさんが前に出てきた。
「ライノ、ワシを覚えているか分からんがケネスだ」
「ケネス……? もしや弓使いのケネスか!」
「ああ。久しぶりだ」
ライノさんは、ケネスおじさんの知り合いだったようだ。
二人は懐かしそうに歳を取ったと言い合っている。
ライノさんがケネスおじさんに、俺とドリーは子供かと尋ねている。ケネスおじさんは首を振って、俺とドリーの事情を説明した。
ライノさんは怒った後に、ケネスおじさんにいくつか質問をした。
ケネスおじさんの話が終わると、納得できないが分かったと答えている。
「エド、ドリー。私の事はライノでいい。二人とも、もし困ったら私を頼るんだ」
「えっと?」
「魔法使いであればそう困る事はないと思うが、ケネスの代わりだと思ってくれればいい」
魔法使いだと名乗ってないのに、魔法使いであることを言い当てられた。
ライノさんを見ると、魔法使いである事に気づいた。
だからと言って何故そこまでしてくれるのかと不思議に思っていると、ライノさんがケネスおじさんは昔仲間に誘っていたほど仲が良かったと教えてくれる。
俺が納得していると、俺とドリー以外の皆が驚いている。
何に対して驚いているのか分からず皆を見回す。
ライノさんはアルバトロスでも有名な冒険者で、仲間として誘われていたのであれば相当優秀だとテレサさんが言う。
「ワシはそこまで優秀ではない。だからライノたちの迷惑になると断った」
「いや、ケネスが居ればダンジョンをもう少し先まで進めていただろう」
「ライノ。そこまで言ってくれるのは嬉しいが、それほどの技量はワシにはない」
ケネスおじさんは否定しているが、ライノさんはケネスおじさんを褒めている。
皆のケネスおじさんを見る目が変わった気がする。
話がそれてしまったと、ライノがギルドに所属するための書類を用意し始めた。
書類を用意しながら、ライノさんがドリーのギルド所属については許可を出そうと言う。
ケネスおじさんから何も言われなかったが、年齢制限があるのだろうか?
「ライノさん、ギルドは年齢制限があるのですか?」
「エド、ライノで構わないぞ。年齢制限はあると言えばある。食べるに困らない場合は、あまり幼い場合は断ってしまう。冒険者には命懸けの仕事が多いからな」
「なるほど」
再びライノで良いと言われた。
サイの見た目をしているライノを呼び捨てにするのは、少々恐れ多い気がするが、今後はライノと呼ぶ事にする。
年齢制限についてはケネスおじさんも知らなかったようで驚いている。
冒険者ギルドの書類も俺とドリーの分は、出身地や両親が偽装されていく。
テレサさんも何も言わないし、本当にお手軽な感じだ。
ライノに偽装して良いのか尋ねると、文字が書けなかったり、出身地が分からなかったりする人が一定数いるのだと教えてくれた。
書類ができるとライノはギルド証を作って貰うと一旦部屋を出た。
すぐに戻ってきたライノが、ギルドの規約が書かれていると言う紙を二枚渡してきた。
「ギルド全体の規約は要約すると、詐欺や犯罪行為をしない事。なるべくギルドの建物で喧嘩をしない事だ」
「それで良いんですか?」
「細かく言うと守れないのが出てくるからな。ギルド全体の規約とは別に、個別のギルドが規約を作っているから、他のギルドへ行ったら個別の規約は貰って読むべきだ」
悪いことしたらダメ程度に覚えておけば良いとライノに言われる。
想像以上に簡単だ。
ということは冒険者には荒っぽい人も多いんだろうなとは理解した。
ライノがギルド証を取りに行って、できた物を俺たちに渡してきた。
ギルド証には穴が空いていたので、協会の鍵と一緒にして首に下げる。
ドリーの分も同じようにする。
ベスの分をどうしようかと思っていると、テレサさんが同じような紐を取り出した。
ベスも同じように首に下げて、ドリーと見せ合っている。
俺にも同じように見せてきたので、俺も見せるとベスは嬉しそうだ。
「ギルド証以外に用事はあるかな?」
用事は終わったかと思ったら、ドリーがライノの前に歩いて行った。
「あの、しっぽさわってみたいの」
「ははは! 良いぞ触ってみるか?」
「うん!」
挨拶以降ドリーが何かを追いかけて見ている気がしたが、ライノの尻尾だったようだ。
ライノに尻尾を触らせて貰った後は、二メートル近いライノに抱き上げて貰って顔にある角を触らせて貰っている。
ドリーは目を輝かしてライノと話している。
「ライノおじちゃん、ありがとう!」
「いつでも触りにくると良い」
「うん!」
気づいたらライノとドリーは仲良くなっている。
俺もライノにお礼を言うと気にするなと返された。
今度こそ用事が終わったので、テレサさんがライノにギルド証のお礼を言っている。
協会に帰るかと思ったが、時間があるので少しだけ狩猟をしようと言う話になった。
「狩猟する場所はアルバトロスの近くで、普段は人があまり出入りしない森なので簡単に狩りができます」
「アルバトロスの近くにそんな場所があるんですか?」
「貴族の狩猟用に使われる場所です。許可は貰ってきたので使うのは問題ありません」
貴族が狩猟で使うために確保した土地なのか。
テレサさんが居るから使って良いとのことだが、使って良いのかと不安になる。
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