第20話 私の帰り道

 全ての授業が終わり、私は帰路についていた。

天上さんも誘ったのだが、どうやら彼女はもう少し寝てから帰るようであった。

 寝たいなら家に帰ってから寝ればいいのにね。


 この前、私は巫女部に入部してみたのだが、鳴子さんはこの前の戦いで体調を崩して休んでいたため、しばらくは巫女部の活動はなかった。


 私はしばらく家までの道のりを歩いていると、小さな公園が見えてきた。

 どうやら、数人の小学校低学年くらいの子たちが、ボールを蹴って遊んでいるようだ。


 一人の少年がボールを蹴った。そして、それを追いかけるもう一人の少年。


ここで、少し不可解な出来事が起きる。

 なんと、ここでボールがすごい速さでジグザグに動き出したのだ。


「あれれ」


「なんかおかしいよ」

 少年たちは目の前の現象を見て、すごく不思議そうにしていた。


 途中で、ボールはその場で何度もバウンドをし始め、どこかへ向かっていった。


「まてぇーー」

 ボールを追っていた少年はそのままそれを追いかける。


 すると、ボールはビルの間の道路まで移動すると動かなくなった。


 そして、私はとんでもないものを目にする。

なんと、ボールのそばにはガマガエルのような怪物がいたのだ。10メートルくらいの巨大な怪物で、8つの目があった。


 そのガマガエルは大口を開けながら小学生を狙っているようだ。小学生はガマガエルが見えないようで、全く気付いていない。


 それを見た私は咄嗟に駆け出した。

「だめーーっ」

 私は少年がボールに近づく直前で、彼を抱きしめると、そのまま横に転がった。


 そして、カエルはパクッとボールを飲み込んだのだ。


 間一髪だった。後数秒遅れていたら彼は危なかったかもしれない。


「大丈夫?」

 私は少年を心配して声をかけた。

 すると、彼は私の後ろを指差していた。


「ね、姉ちゃん。あれ」

彼は、震える声音でそう呟く。


 私は、後ろを振り返る。

すると、ガマは長い舌を出してうねうねと動かしており、8つの目が私たちを睨みつけていた。


 そして、迫り来るガマの舌。


全身から吹き出すヒア汗と焦燥感。


 私は、小学生を守るようにして覆い被さった。

 しかし、いつまで経ってもガマの舌が私たちを捕らえることはなかった。


 私は恐る恐る目を開けると、ガマの下が切断されて、半分ほどなくなっていた。


 そして、ガマガエルの周りにはいつのまにか御札が置かれていた。

「夢幻の巫女の名により願い奉る。

 マワリテメクル夢幻の力よ。

 今ここに収束し悪しきものを討ち滅ぼせ」

 そうして、祝詞のようなものが聞こえてくると、御札が光を帯び始めた。


そして、眩しい白色の光が私の視界を染めて、光の柱が天高く立ち昇ったのだ。


 ガマガエルは光に呑まれると、断末魔を上げた。

「グギャァーーーーッ」

 そして、光が消えた後には、ガマガエルはいなくなっていた。


 辺りを見渡すとそこには、制服姿の日本刀を持った少女がいた。

 そして、彼女は日本刀を鞘に仕舞いながら、私の方に歩いてきた。


「あんた大丈夫?」

 私は、その少女が鳴子さんであることに気がついた。


「ええ、私は大丈夫なんですけど、それより鳴子さん。

 体の方は大丈夫なんですか?」

 私は、彼女の体を心配して、そう訊ねる。


「もう平気よ。お陰様ですっかり元気だわ。

 それより、この子を見せて」

 彼女はもう大丈夫だと言うと、小学生を見せるように言ってきた。


 腕の中の小学生を見てみると、ショックを受けたせいか気絶していた。


 鳴子さんはしゃがみ込むと小学生を見つめる。


「ちょっと、悪い気に当てられてるみたいね」

 彼女はポケットからヒト型の紙を取り出すと、それを少年にかざした。

 すると、黒い気のようなものが出てきて、その紙に乗り移った。


「あとは、休ませれば大丈夫だわ」

 鳴子さんはもう大丈夫だと呟く。


すると、さっきまで気絶していた少年と遊んでいた小学生が駆け寄ってきた。


「友達を助けてくれてありがとう」


「姉ちゃんすげえや。あんな化け物を倒しちゃったもんな」

 そして、少年たちは口々に称賛の言葉やお礼を言った。

 どうやら、彼らにもあの化け物が見えていたようだ。


「どうも」

鳴子さんは、そう返事をした。


 そうして、鳴子さんと私は気絶した小学生をベンチまで運んでいき寝かせた。


「この子が起きるまで見ててあげてね」

 鳴子さんは周りの少年たちに彼が起きるまで見ているよう頼む。


「後は任せてくれ」


「そこの短髪の姉ちゃんもありがとな」

 そして、少年たちは私たちに後は任せるように言うと、ペコリとお辞儀おじぎをした。


 こうして、私と鳴子さんは小学生たちと別れ、公園を後にした。

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狂った世界の真ん中で〜霊感のある私は、異世界な町で能力バトルに巻き込まれました。 龍星群 @ryuseigun1663

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