第19話 授業風景

 私の名前は風来坊綾香。

 霊感が強いだけのごく普通の高校生だ。


 鳴子さんと一緒に愛沢さんを助けに行ってから数日後のことである。

2限目が終わった後の休み時間に、停学期間を終えた天上さんが登校してきた。


 久しぶりの天上さんと再会し、私は喜んだ。

「おはよう。天上さん。

 久しぶり」

私は、彼女に向かって声をかける。


「お、おう。綾香か?久しぶりだなあ」

すると彼女は、私に向かってそう返事をした。


 どうやら彼女はかなり眠そうにしているようだ。

 寝不足なのかなあ?


「かなり眠そうにしてるけど大丈夫?」

私は、彼女を心配してそう訊ねる。


「ま、ちょっと寝不足気味ってとこだ」

彼女は、私の質問に対して、そう答えた。


 やはり彼女は、寝不足のようだ。


「何してたの?」

次に私は、彼女が何をしていたのかを訊ねてみる。


「休みの間、プロミネンスストライクっていうゲームにどハマりしてたわ。そんで、5日間くらいずっと不眠不休でプレイしてたぜ」

すると、彼女は少し驚くような答えを返してきた。


 どうやら、天上さんは5日も徹夜でゲームをしていたようだ。

 流石にそれには、びっくりさせられた。


「そんなに寝なくて大丈夫なの?」

私は、再び心配の声をあげる。


「ま、授業中に寝るから大丈夫だわ」

 すると、彼女はすごく眠たそうにそう呟くと、机に突っ伏して寝てしまった。


 色々と話したいことがあったけど、今日はそっとしておいてあげよう。


 そして、私は次の授業の準備をするために、鞄から教科書とノートを取り出した。


 私が準備を終えると、教室の扉が開いた。「コケコッコーーーー」


 すると、いつもの鳴き声と共に鳥崎先生が入ってきた。

 今日の3限目は鳥崎先生が担当する国語である。


 先生が教壇に立つと同時にチャイムが鳴り、授業の始まりを告げた。



 ◆

1限目は、そのまま鳥崎先生の国語である。


この授業は、先生が指定したところを生徒一人一人が音読していき、読んだ部分を先生が解説をするという感じだ。


 そうして、授業が始まってから15分近くが経過した。

相変わらず、天上さんは机に突っ伏して寝てしまっていた。

すると、教科書を音読する順番が彼女に回ってきた。


「えー、コッコ。次は天上。教科書の23ページの1行目を読むでコケ。

 天上、天上?」

 先生は彼女へ、教科書を音読するように指示を出した。

 しかし、天上さんからは何の反応もなく、寝たままであった。


そんな彼女を見た先生は、教壇から降りて教科書を筒状に丸めながら彼女の机の近くまで歩いていく。


「コケコッコーーー!

 天上、天上、起るでコケッ!」

 先生は、天上さんの隣に立つと、しゃがみ込んで耳元でそう叫びながら、起こそうとした。


 それでも、天上さんは起きないようである。


 すると、先生は手に持った教科書で彼女の頭を軽く叩き始めた。

「天上。いい加減に起きるで、、、」


 次の瞬間、ここで不可思議な現象が起こった。


「コケーーーーーーーーーッッ」


 なんと、先生の体全体に電流のようなものが流れたかと思うと、ガタガタと震えながら悲鳴を上げたのだ。まるで牧場の鶏が電気柵にぶつかったような感じだった。


 そして、先生は床に倒れ込み、痙攣けいれんしていた。

「コッ、コッ、コッ、、、」


 それから数秒後、先生はゆっくりと立ち上がった。


 すると、教室の前方のドアがガラリと開き、メガネをかけたいかにも厳しそうな女性の先生が顔を出した。


「鳥崎先生!

 授業中になんたることですか!!

 もうちょっと静かにしなさい!」

 そのメガネの先生はそう叫ぶと、バタンと勢いよく教室のドアを閉めて去っていった。


 すると、教室中からどっと笑い声が巻き起こった。


私は、思わず苦笑いを浮かべた。


 そして、先生は何事もなかったかのように教壇に戻り、授業を再開したのである。

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