第18話 解かれた封印

 とある雑木林の中。

 4人の男女が隊列を組んで歩いていた。

 そのうちの男二人は白い着物のような服に青色の袴を着ており、女2人は巫女服を着ていた。


「ねえ、私たち鳴子様に変わって調査に来たけど、本当に鬼なんて出るのかなあ?」

 すると、茶色の髪の女が残りの3人にこう訊ねた。


「ま、何百年も前のことだろ?封印されてるうちに弱って消えちまったんじゃねえの」

 すると、その中の黒い髪をリーゼントにした男がそう答える。


 彼らは鬼が封じられている塚が壊されていたという報告を受け調査に来たのだ。


「やっぱり、そうなのかなあ?

 歴代の夢幻の巫女が封印するしかなかったっていうし...」


 というのも、この鬼は数百年前夢幻町で暴虐の限りを尽くしていたところ、歴代の夢幻の巫女に封じられたようだ。


 彼らはしばらく歩いていくと、雑木林の開けたところに出た。そこには、無惨に壊れた灯籠のような形の塚があり、辺りには石の破片が散らばっていた。


「これは酷い」

 それ見た先頭を歩いていたリーゼントの男が顔をしかめながらそう呟く。


「誰かがやったのかなあ?」


「劣化したからじゃね?」

 茶髪の女が周りに向かって尋ねると、後ろを歩いていた、短髪で吊り目の男が答えた。


「夢幻家が定期的に手入れしてるらしいし、それはないと思う」

 そして、一番後ろを歩いていた長髪の女がそのように呟いた。


 すると、突然。さっきまで泣いていた鳥や虫の声がピタリとやみ、辺りは異様な静寂に包まれ始めたのだ。


 異変を感じ取った4人の男女は警戒し、あたりを見回した。

 それから数秒後、メキメキという木が薙ぎ倒される音が響いてきた。その音は、段々と大きくなり、彼らの方に近づいていった。


 そして、開けた場所から数メートル離れた木が薙ぎ倒されると、全身朱色で2本の角がある7mくらいの鬼が現れた。腰には茶色の布を巻いているようで、手には4mくらいの巨大な鉄棒を持っていた。


 鬼を見た瞬間。

 4人の男女はそれぞれ御札を取り出す。

「「夢幻の使いの名において、畏み畏み申す。

 夢幻の力よ。雷となりて、打ち据えよ」」


「「夢幻の使いの名において、畏み畏み申す。

 夢幻の力よ。炎となりて、焼き尽くせ」」


 そして、祝詞を唱えた後、一斉に投げ放つ。

 御札は飛んでいく過程で、炎や雷に変化し鬼に殺到。

 ものすごい音を立てながら、それらは全て鬼に被弾した。


 しかし、鬼は何事もなかったかのように立っており、4人の男女を睨みつけていた。


 すると、鬼は口を開きこう叫んだ。

「夢幻の巫女はどこじゃ!?

 長年封印された恨み晴らさせてもらうぞ!!」


 どうやら、鬼は夢幻の巫女を探して復讐しようとしているようである。


「そんなの教えるわけないだろ」

 リーゼントの男が鬼に向かって叫び返す。


 次の瞬間、鬼は跳躍し、鉄棒を大きく振り上げ、4人の男女に向かって振り下ろした。


 4人の男女は後方に跳躍して回避。

 彼らは鬼を取り囲むように移動すると、地面に御札を叩きつけた。


「「「「夢幻の使いの名において、畏み畏み申す。

 夢幻の力よ。今そこに降り立ち、かの物を束縛せよ」」」」


 すると、御札の中から紙でできた鎖のようなものが飛び出し、鬼をがんじがらめにした。


「よし、捉えたぞ!

 これから封印の儀を執り行う」

 リーゼントの男は周りの男女にそう指示を出した。


 すると、鬼が全身に力を込め始めたのだ。そして、紙の鎖はどんどん膨張していき、ついには千切れ飛んでしまった。


「う、嘘だろ!?」

 リーゼントの男がそう叫ぶ。


 すると、鬼は手に持った鉄棒を天高く振り上げた。

 鉄棒に収束する邪悪な気。

 そして、鬼は思いっきり、それを地面に叩きつけた。


 次の瞬間。

 4人の男女は衝撃波を受けた。

 邪悪な気が波紋のように広がって、彼らに襲い掛かったのだ。


 そして、4人の男女は大きく吹き飛ばされ意識を失った。


「夢幻の巫女よ!

 覚悟しておれ」

 鬼はそう叫ぶと、4人の男女には目もくれず、雑木林の中に消えていった。

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