第12話 憂鬱な体育の授業
次の日の、昼休み。私は、次の授業の体育に向けて着替えをしていた。
正直、体育に参加するのはかなり億劫であった。食後に運動をすると、脇腹が痛くなるというのもあるが、何より、昨日はあんなことがあったからである。
体育をズル休みして保健室で寝ていたい気分であった。
まあ、ズル休みしたところで根本的な問題が解決するわけでもないし、今後体育に出るのがさらに
周りの生徒たちを見てみると、みんな
ちなみに、昨日先生にお尻を叩かれた生徒は学校を休んでいた。
早く、立ち直れるといいのだが。
そんなことを考えていると、天上さんがカッターシャツのボタンを外しながら私に声をかけてきた。
「なんだ、クラスのやつらみんな辛気臭い顔してるけど、何かあったのか?」
「実はね...昨日の授業でね、、、」
そして、私は天上さんに昨日あった出来事を話した。
すると、彼女は予想外のことを言ってきた。
「へー。そりゃ面白そうだなあ。ワクワクしてきたぜ。早くその体育教師をお目にかかりたいもんだなあ」
彼女は、早く体育教師に会うのが楽しみだという感じであった。
「そんなに面白いものでもないと思うんだけどなあ、、、」
私は、彼女のことが理解できず、ボソリとそう呟いた。
着替え終わると、私と天上さんは今日の体育が行われるグラウンドへと移動していった。
◆
私たちは、グラウンドに着くと、先生から怒鳴られないように、昨日作った4列を作って待っていた。
ちなみに、天上さんは私がクラスメイトに声をかけて、列の中に入れてもらった。
しばらくして、チャイムがなると玄田先生がやって来た。
「よし、お前ら、
先生は、まず初めにクラスメイトが全員いるかの確認を取る。
「先生。今日は愛沢さんと黒田さんが休みです」
彼の問いかけに対し、クラスメイトの一人がそう答える。
「おいおい、黒田と愛沢は欠席かよ・・・
ま、今度あいつらが来たらお仕置きだな」
すると、先生は呆れたような口調で、衝撃的なことを口走った。
どうやら、体育の授業を欠席すると何かしらの罰があるようだ。
怖い怖い。
保健室に行かなくてよかったと思う。
「最初は準備運動からだ。あまり手間取んなよ!」
私たちは玄田の掛け声と共に、屈伸をしたり、腕を伸ばしたりしていった。
「次は、昨日と同じように人間跳び箱をやってもらう。手間取らせんなよ」
そして、私は昨日のポニテールのこと一緒に人間跳び箱をしていった。
すると、玄田がここで怒声を上げる。
「そこの金髪!腕組んで突っ立ってないで、さっさとやらんかい!」
どうやら、天上さんが先生から
「へ〜い」
彼女はそう返事をすると、意外と素直に従っていた。
私は、彼女が何かしでかすかもしれないと心配したが、今のところは大丈夫そうである。
もしかしたら、しばらく玄田先生を観察して楽しんでいるのかもしれない。
人間跳び箱の後、昨日より手短にストレッチを行なっていった。
そうして、ストレッチを終えた後だ。
玄田は私たちにとんでもない指示を出して来た。
「よーし。
今日はお前らの根性を見せてもらう!
今から隊列を保ったまま授業が終わるまで校庭を走り続けろ!
絶対に止まるんじゃねえぞ」
昨日は20分間走ったが、今日は40分も走らなければならないようだ。しかも、今日は春にしては気温が高く、太陽がギラギラと校庭を照らしていた。それに加えて、昼食を食べた後だ。さぞかしきついことをだろう。
すると、一人の生徒が先生に向かってある提案をした。
「先生。
これはちょっとキツいのでもう少し走る時間を減らしてもらうか、途中休憩を入れてもらっていいですか?」
しかし、先生は提案を拒否し、異議を唱えた生徒を怒鳴りつけた。
「俺の決めたことにいちいち口出しすんな!
そんなもんは根性でなんとかしろ!!」
果たして、根性でどうにかなるもんなのだろうか?
私は、強く疑問に思った。
「さっさと、走れ!」
パン、パン、パン。
そして、玄田が走り出すよう指示を出し、3回くらい手を叩いた後、私たちは隊列を組んだまま校庭を走り出した。
◆
開始から、15分くらいたっただろうか?もういい加減、休みたい。
喉もカラカラで脇腹が痛くてしょうがない。
周りの生徒の顔を見てみると、みんな
そんなことを考えながら、天上さんの方をチラリと見た。
すると、彼女はかなり余裕そうな表情で走っていたのだ。
なんで天上さんだけ、あんなに平気そうなんだろう?
そうして、しばらく走り続けていると、突然私の周りを走っている生徒たちの何人かが足を止めたのだ。
そして、私もふと立ち止まる。
どうやら、他の生徒たちは驚いたような顔で後ろを振り返って、見つめているようである。
いったい、何があったんだろう?
私も、彼女たちの視線の方を見ると、なんと昨日も授業中倒れていた女子生徒が前のめりになって倒れていたのだ。
なんだか、昨日と違ってかなり様子がおかしい。
ゼェ、ゼェと荒い息をして、意識がほとんどないようであった。
これはかなりやばい状態である。
私のような素人から見ても明らかだ。
すると、私の耳に先生の怒号が飛び込んできた。
「何をしてるんだ貴様!
さっさと起きろ!!」
彼は、女子生徒の容体なんて知ったこっちゃないという口振りであった。
そして、先生は更に目を疑うような行動に出た。
「おい、さっさと立てよ。
何、呑気に寝てやがるんだよ、、、」
なんと、先生は無情な口調でそう言いながら、倒れた女子生徒の体を足で踏みつけて、揺らしたのだ。
その光景を見た私は絶句した。
そして、私は居ても立っても居られなくなり、先生から罰を受ける覚悟で、周りの生徒たちから離れ、前に進み出た。
「先生。
彼女、かなりやばいと思います。
保健室に連れて行くべきなんじゃないですか?」
すると、先生は私を睨みつけながら、とんでもないことを言ってきた。
「何を言ってるんだお前?
そんなんはこいつの自業自得だろ、、、
根性がねえからそうなるんだろうが!!
最近の若い奴らは、、、
ほんと根性ねえなあ」
先生の人の道から大きく外れた物言いに、流石の私も堪忍袋の緒が切れた。
「倒れた生徒に向かってそんな言い方はないじゃないですか!?
もっと生徒を気遣うべきでは!!
それでも貴方は先生ですか!?
貴方は先生失格です!!」
私の物言いを聞いた玄田は、かなり
「誰に口聞いてんだ、このクソガキがぁ!!」
次の瞬間、玄田は大きく拳を振り上げると、私にそれを振るおうとした。
私は、怖くて両腕を上げながら、目を瞑った。
しかし、玄田の拳は私に届くことはなかった。
私は、恐る恐る目を開けてみると、私と玄田の間に、金色の髪の少女が立っているのが見えた。
その少女は玄田の拳を片手で掴んでいた。
「おいおい。大の大人が女の子に向かってそれはねえんじゃねえの?」
私は、少し遅れてそれは天上さんであることに気がついた。どうやら、天上さんは間に割り込んで、
「今日のところは黙って見ててやるだけにしようと思ったが、やっぱお前、許せねえわ」
すると、玄田は怒りで震えながら口を開いた。
「なんだ。
貴様は、、、」
天上さんは玄田の拳を離して一旦無視すると、5人ほどの生徒を指差し、倒れている生徒を運ぶように指示をした。
「そこのお前と、お前と、お前と、お前と、お前。さっさと、そこで倒れているヤツを保健室に運んでやれ」
天上さんに指示された生徒たちは、倒れた生徒に駆け寄ると、お互い協力して持ち上げながら運び始めた。
すると、あまりの怒りに震えていた玄田はようやく口を開いた。
「なんだ、なんだ、なんだ、なんだ、なんだ!!
教師に向かってそんな口の聞き方をしやがって!!
貴様だけは、、、
絶対に、許さんぞォォーーーーーーッッ!!」
玄田が吠えた直後、そこで不可思議な現象が起こった。
次の瞬間。
ドゴォーー!!
響き渡る衝撃音。吹き荒れる暴風。
私は全身で突風を感じると、たじろぎ後ろに下がった。
そして、驚きと戸惑いを抱きながらも、目の前の光景に目を凝らした。
なんと、天上さんの体は数十メートル先に移動していたのだ。
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