第11話 着替えと昼休み
「あの先生ほんとひどい」
「そこまでする必要なかったよねえ...」
私が教室に戻ると、女生徒の間では体育の授業の時の話題で持ちきりだった。
あれはかなり酷かった思う・・・
今の時代に、こんなことが許されるのだろうか?
私が中学や小学生の頃も、厳しい先生や起こると怖い先生もいたが、あそこまでではなかった。
私は、体操服の上を脱ぐと、カッターシャツを羽織り、ボタンを止めていった。
中程までボタンを止めた時だ、すると突然私の耳に数名の女生徒の悲鳴が飛び込んできたのだ。
「キャーー!」
「この変態!!」
ん?何事だろう?
どうやら、一人の女生徒がどこかを指刺しているようだ。そして、私は女生徒の指差す方へと目を向ける。
すると、少し驚くような光景が、私の目に飛び込んできた。
なんと、数人の男子生徒に加えて、担任の鳥崎先生と校長先生が覗きをしていたのだ。中には、クラスで一番大人しそうな森本くんも混ざっていた。
そして、それに気づいたクラス中の女生徒たちは、一斉に悲鳴を上げた。
「「「きゃーーーーッ」」」」
そして、教室中を飛び交う教科書や文房具。
「ぎゃっ」
「コケッ」
「イテッ」
男子生徒や先生たちはそれらを食らうと、一目散に逃げていった。
私は、ただ苦笑いを浮かべながら、その光景を呆然と眺めているだけであった。
やっぱり女子って怒ると怖いなあ、、、
まあ、私も女なんだけど、、、
◆
そんなこんなで、授業が終わると昼休みに差し掛かった。
今日は初日なのに、昨日の寝不足と体育の時の疲れで、全く集中できなかったなぁー、、、
授業中、クラスのほとんどの女子生徒たちはぐったりとしていた。
今は、昼食の時間だ。
クラスメイトたちは、お弁当を食べたり、購買で食料を買うため教室を出たりしていた。
私は今朝、弁当を作る予定だったが、色々と時間がなくて作れなかった。
なので購買で何かを買いに行くことに決め、席を立とうとした。
すると、天上さんが教室に入ってきた。
なんと、彼女の手には物凄く大量のパンが抱えられていたのだ。
彼女が私の側まで来ると、私は声をかける。
「そんなにいっぱいどうしたの?」
「購買で買った」
彼女はそう答えると、私の机の上にドサリとパンを置き、自分の椅子を回転させ、そのまま座り込んだ。
こんなにいっぱい食べられるのだろうか?
「食べられるの?」
「ま、これくらいの量なら余裕だろ」
どうやら、彼女はこんなにあるパンを全部食べるつもりのようである。
天上さんって大食感なんだなあ・・・
そして、天上さんはパンを一つ取ると、袋を破いて、パンにかぶりついた。
「へー、そうなんだー。
天上さんって、結構食べるんだね〜
いつも、こんなに食べるの?」
「ま、いつもこんな感じだな。どうやら体の燃費が悪いみたいで、こうやってたくさん食べねえとすぐにへばっちまうんだよ」
天上さんって、よく動いているような感じだから、お腹空きやすいのかなあ。
「お金の方は、大丈夫なの?」
「定期的に義母が銀行口座にお金振り込んでくれるから大丈夫だな。
ま、一様は考えて金は使ってるつもりだが」
どうやら、彼女には義母がいるらしい。両親はいないのだろうか?
そういう話題は、デリケートだから、あんまり聞かない方がいいよね。
「へー。天上さんって義母がいるんだ〜
いったい、どんな感じの人なの?」
「んー。一言で言うとかなり変わってるかな?なんか、超心理学っていうやつの専門らしくて、世界中のオカルトとかあらゆる不思議を研究してるらしいぞ」
それはちょっと興味がある。私の能力のこととか、色々と話してみるのも面白いかもしれない。
すると、天上さんは目の前のパンを一つ取ると、私に手渡してきた。
「よかったら食うか?」
「そんな、悪いよ・・・」
私は、彼女へ遠慮気味にそう言った。
「遠慮すんなよ。
あんとき飯を奢って貰った礼だ。
好きなだけ食っていいぞ」
どうやら、彼女はお礼を兼ねて、パンを勧めてきたらしい。
この後、私は自分でパンを買いに行くつもりだったが、せっかくの彼女なりのご好意だ。
いたたががない訳にはいかないだろう。
「なら、お言葉に甘えて・・・」
私は、天上さんからパンを受け取ると、袋を開けた。中からは、甘いイチゴジャムの香りがしてきた。
私は、一口パンにかぶり付く。
すると、甘いイチゴジャムの味が口の中いっぱいに広がった。
「うん、
これは中々に美味しいね」
「そうか?まあこんなもんだろ」
天上さんはそう言ってるが、購買で売っているパンにしては、かなり美味しいような気がする。
すると、今度は天上さんが食べかけのパンを私の顔前に差しだてきた。
「それより、こっちも食うか?」
「うん。いただくね」
私は彼女が差し出してきたパンを一口かじると、今度は抹茶風味の味が口の中に広がった。
これも中々にいける。どうやら中には抹茶のクリームが入っているようだ。
「お前のも一口だけもらっていいか?」
私も食べかけのパンを天上さんの口元まで持っていった。すると、天上さんも私の食べかけのパンにかぶりついた。
「あの子たち、、、」
「アレって間接キスじゃない?」
「ほんとだー」
どうやら、私たちがパンの食べさせ合いをしていたのを、クラスメイトたちに見られていたようだ。
私はほんのりと頬を赤らめた。
やっぱり恥ずかしいなあ、、、
「お前、顔赤いけど大丈夫か?」
すると、天上さんは私の顔を見つめながら、不思議そうにそう呟いた。
それから、しばらくして昼休みが終わる頃には、山のようにあったパンもほとんど全て天上さんが平らげてしまった。
◆
昼休みが終わり、最後の授業の終わりがけに差し掛かった。
初日から寝不足で、体育であんなに走らされた上、7限も授業があって結構キツかったなあ。
ちなみに、天上さんは午後の授業は全て寝ていた。
私も途中で寝てしまいたかったが、頑張って起きてノートを取っていた。
やっと最後の授業が終わったので、私は天上さんを誘って下校しようとした。
「じゃ、また明日な」
だが、天上さんは私に挨拶をすると猛スピードで教室から出て行ってしまった。
結構、破天荒だなあ、、、
ま、今日は一人で帰ろう。
そして、私は家まで一人で帰っていった。
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