第10話 恐怖の体育教師
今日の体育は体育館で行われることになっていたので、私は体育館へと移動した。
体育館に入ると、後側の壁にかかっていた白い布が取り外され、壁が綺麗に修復されているのが目に入った。
よく、あんな短期間で修理できたものだ。
他のクラスメイトたちは体育館のあちこちに散らばり雑談に花を咲かせているようであった。
体育館に来てから数分がたった時だ。
扉が開き、筋骨隆々で強面の先生が入ってきた。
そして、その先生はズカズカと体育館に入ってくるなり、壇上へと飛び乗り怒声を上げた。
「ゴラァ!!
くっちゃべってないで、さっさと集まってこんかい!!」
先生の怒声を聞いた瞬間、あんなにガヤガヤと騒いでいた女生徒たちは急に雑談を辞め、静まり返った。
えっ?何?
私は一瞬だけ呆然としたが、すぐに動かないとマズいと感じ、先生の元へと早足で移動ていった。
他の生徒たちも早足で続々と先生の前へ集まってきた。
約30秒後には、半分以上の生徒が先生の元へ集まったようだが、まだ数人の生徒たちはとぼとぼと歩きながら移動してきている。
それを見て腹が立ったのか、先生はとぼとぼ歩いている生徒たちを一喝した。
「さっさと歩けよ!
何、ノロノロと歩いてんだ!」
すると、その生徒たちは先生の怒声を聞くなり、駆け足で先生の元へと向かっていった。
生徒たちが全員集まると、先生はいきなりかなり不機嫌そうに説教を始めた。
「お前ら、何やってんだよ!
さっさと、授業が始められるようあらかじめ背の順に並んで列を作っておくべきだろ!
そんなことも分からんのか!」
それを聞いた、生徒たちの顔はみんな困惑していた。
流石に、それはちょっと理不尽なんじゃないかなあ、、、
そして、その先生は自分の名前を名乗り、生徒たちに列を作るよう指示を出した。
「俺は、お前らの体育を担当する
これから、お前らには、背の順で横一列に並んでもらう!
あまり手間かけさせんじゃねえぞ」
玄田の指示を聞くと、私たちは横一列に並び始めた。
私は、ちょうどクラスでも真ん中くらいの身長であったため、出来かけの列の真ん中の方へ移動していき、2人の生徒と背比べをした後、列へと加わった。
そして、列がほとんど完成した時だ。
「何、もたもたしてんだよ!
さっさとしろよ!」
玄田はどちらが背が高いかを話合っていた生徒に向かって怒号を飛ばし始めた。
それを聞いた私は、自分が怒鳴られたわけではないにも関わらず、ビクッとなる。
「「ヒィッ」」
玄田の怒声を聞くと、その生徒たちは怯えた声を上げながら、急いで列へと加わった。
「次は、横4列に並べ!」
玄田が次の指示を出すと、私たちは4列に並んだ。
さっきよりは、すんなりと並べたようだ。
「その次は、前後でペアになって馬跳びをしてもらう。まずは、列の前の方のやつが前屈みになり、後ろのやつが飛べ!
休まず飛び続けろよ!
いいか、わかったな!」
どうやら、人間跳び箱をするようである。
私のペアになる相手は、茶色の髪をポニーテールにしたのが特徴の生徒であった。
「よろしく」
「こちらこそ」
私は、後ろだったのでポニーテールの生徒が前屈みになり、私が先に飛ぶことになった。
飛ぶ直前になり、私を恐怖が襲った。
失敗したらどうしよう、、、
もちろん、失敗して転んだり、女子生徒を怪我させてしまうかもという恐怖もあるが、何よりあの先生に叱責されるのが、怖い。
私は、勇気を振り絞って思い切り飛んだ。すると、意外とすんなりと飛べたのだ。そして、私は何回か人間跳び箱を往復した。
私が、人間跳び箱を往復しながら一瞬だけ前方に目を向けると、小柄な女子生徒が人間跳び箱を前にして怯えているのが目に入った。
「わっ、私こんなの無理・・・」
「さっさと飛べよ!
こんなこともできないのかッ!!」
それを見た玄田は、小柄な女生徒に向かってすごい剣幕で怒声を飛ばした。
そして、小柄な女生徒は玄田の声に触発されたのか、思い切って人間跳び箱を飛んでいった。
途中で、玄田からペアを交代するように指示があり、今度は私が跳び箱になった。
人間跳び箱が終わった後は、二人が背中合わせになって、一方が前屈みになり、背中に相手を乗せるという感じのストレッチをやった。
そして、私たちは、次々と玄田の怒号と共に準備運動をしていった。
その間、私は、何か失敗をしたら先生から怒鳴られると思うと、生きた心地がしなかった。
そして、体育館の時計の針が残り20分を差した時だ。
ここで、玄田からとんでもない指示があった。
「お前ら全員、残り時間まで4列で隊列を保ったまま体育館を走り続けろ!
少しでも隊列を乱す奴がいたら、、、
分かってんだろうなあ...」
どうやら、体育館を残り時間の間ずっと走らなければならないようだ。
流石に、普段からランニングとかをやっている人ならともかく、普通の女子高生には無理があるんじゃないかなあ?
そして、私たちは先生が笛を吹くと、体育館の中を隊列を組んだまま走り出した。
「そこ、隊列乱れてるぞ!」
少しでも、隊列が崩れそうになると、玄田の怒声が飛んできた。
その度に、女生徒たちは隊列を正し走り続けた。
走り出してからしばらく立つと、私はかなり息切れしてきた。
これは、かなりきつい。昨日の疲れもある上に、寝不足なので尚更だ。
私は、今にも倒れ込んで休みたかったが、あの先生のことを考えると、とても恐ろしくてそんなことはできない。
周りの生徒たちは苦悶の表情を浮かべながらも懸命に走っていた。
始まってから、10分くらい経った頃だろうか?
ここでとんでもないことが起こったのだ。
なんと一人の女子生徒が倒れこんでしまった。
そして、隊列はかなり乱れ、周りの生徒たちは立ち止まった。
倒れた生徒に目を向けると、彼女はとても苦しそうに息をしていた。
「はーッ、はーッ、はーッ...」
それを見た玄田は怒りと困惑が混じったような顔で、倒れた女生徒を睨みつけながら低い声でこう言った。
「何をしているんだ、貴様は?」
玄田に睨まれても、その女生徒は余裕がないようで、未だ苦しそうに息をしている。
流石に、これは放って置けない。私は手を上げて先生に、その女生徒を休ませるよう提案しようとした。
その時だ。
私より先に別の女生徒が隊列を抜けて前に進み出た。
茶色の髪をショートボブにした女生徒である。
「先生。
星宮さんは生まれつき病弱で身体が弱いんです。彼女を一旦休ませてあげてください」
それを見た先生は、茶髪の女生徒に氷のような冷たい視線を向けた。
「なんだ。
お前は?
俺に反抗する気か?」
「い、いえ。
ただ、、、」
そして、私はこの後かなり衝撃的な光景を目の当たりにすることとなった。
パチーーン
体育館中に響き渡る乾いた音。そして、床にへたり込む茶色の髪の女生徒。
なんと、玄田は女生徒に向かって、思いっきり平手打ちをしたのだ。
その生徒は、衝撃と困惑が入り混じったような表情を浮かべながら、上目遣いで玄田を見つめる。
女生徒の頬には真っ赤な手形の痕が残っていた。
それを見た私は開いた口が塞がらなかった。
周りの生徒たちは驚きと恐怖が入り混じったような引き攣った表情を浮かべ、その光景を眺めていた。
すると、玄田はまたもやとんでもない行動に出る。
彼は、へたり込んだ女生徒を脇に挟むような感じで持ち上げる。
そして、ずり下ろされる女生徒のパンツとズボン。丸見えになる彼女のお尻。
次の瞬間!
バチーン!!
またもや乾いた音が、体育館に響き渡る。
なんと、今度は女生徒の尻を思いっきり叩いたのだ。
「ゴラァ!ガキの癖に、」
バチーン!
「痛いっ!」
バチーン!
「この俺にっ、」
バチーン!
「痛いっ!」
バチーン!
「逆らってんじゃねーッ」
バチーン!!
玄田は何度も何度も女生徒のお尻を叩き続けた。
音が完全に止むと、玄田は女生徒を乱暴に床へ下ろした。
そして、苦しそうな息をしていた女生徒やお尻を叩かれた女生徒に向かって玄田は怒声を浴びせた。
「お前ら、さっさと戻って時間まで走り続けろ!」
その怒声を聞いた二人の生徒は大急ぎで、隊列へと戻っていった。
「てめえらも、突っ立ってねえでさっさと走れよ!」
二人の生徒が戻ると、私たちは再び走り出したのだった。
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