第40話 ブランド化

 思った通り、訓練したレンタル奴隷は好評を博した。いや、正直に言うと予想以上に大好評だった。奴隷の供給が追いつかない。

 この波に乗ろうして、あるいは俺のところが繁盛したせいで客を失って――結果、俺と同じことをし始めた奴隷商人が現れた。


「というわけで、これからは少し客足が落ち着く見込みですわ」


 嫁が言う。

 王女からの情報となれば、国家レベルの諜報能力で得た情報だろう。なんちゃらギルドの支部長だとか、なんとか組合の組合長だとか、そんなのとはレベルが違う。


「余裕ができるわけだな。

 では、その間に次の手を打とう」


「どんな?」


 魔王が言う。

 あまり興味がなさそうだ。奴隷解放運動とか、魔王には関係ないもんな。しかも力こそ全てという価値観では、奴隷なんて弱いからなるもので、助けてやる価値などない、という事になる。

 つまりは「我の活躍の場を作れ。退屈じゃ」ということだ。


「訓練内容を調節する。

 レンタル期間を終えて戻った奴隷と、リピート客から、感想を聞いて訓練の過不足を洗い出す。

 ルストにも協力してもらうぞ。戦闘力に関しては、高ければ高いほど良いからな」


「また魔物の召喚係か」


 魔王がため息交じりに言う。

 魔王は召喚士ではないが、その権能によって配下の魔物を召喚し放題だ。殺さないように戦えと命令するのもお手の物。これだけでも他では真似できない品質を獲得できる。

 ただし、魔王自身は暇である。


「ルストとまともに戦える奴なんか育てるのは無理だろう。それこそ異世界から召喚するしかない。

 四天王と戦うのも難しいんだから」


 前世の俺が、奴隷の首輪を装着される前に受けた説明は、本当だった。

 王国軍は四天王に敗れていた。嫁からの情報だ。実質は当時公爵だった新王からの情報である。間違っているという心配はない。

 勝った側――魔王と四天王アーマーマスターからも「そんな事もあったな」と情報を得ている。


「まあ、主で我慢するしかないか。

 それはそれで一方的に負けるからつまらんのだが」


 ステータスが魔王の10倍もあるので当然だ。


「手加減しようか?」


「されて喜ぶとでも?」


 魔王は不満そうに言う。

 真剣勝負をお望みなのだ。


「だよな。ま、諦めろ。

 それか、俺と戦えるぐらいに強くなれ」


「ぐぬぬぬ……」


 すでに最強、カンスト状態。

 そこから更に10倍となると、まずは限界突破系のスキルを獲得する必要がある。俺は魔王を倒したから獲得できたが、魔王自身はどうやったら獲得できるのか、俺にも分からない。


「ルスト様のお相手はともかく……先に始めた有利を活かして、価値を高め、独走状態を続けるわけですね」


「そうだな。

 今はまだ第1段階だ。第2段階が始まれば、あとは勝手に第3段階へ進んでいくだろう。もう少し、俺達が牽引してやる必要がある」


 第1段階は、奴隷の価値を高める。

 第2段階は、奴隷の価値が高まり過ぎる。

 第3段階は、奴隷制度の価値がなくなる。

 そしてゴールは、奴隷制度が撤廃されることだ。

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