8話
灰狼の爪
白銀の剣
音の衝撃が轟き、物理的な衝撃波に突風を生み出す、森が下からの風で吹き荒れて森全体が動き、大量の野鳥と共に木の葉が舞う。空を埋め尽くしていた影に穴が開き始め、雨のような木漏れ日が降り注ぐ。
いくつもの柱の中心にいた二つの武器が拮抗する。
ガアァァアアン……
「早すぎる!回避★スキルでギリギリ避けられるけどアイツの姿が見えない、」
星をつけた超強化された回避スキルのおかげで間一髪で躱すことが出来ているが、なぜ
一度も何かを殺すための武器を持ったことがない少年が、モンスターと戦えるのか。
まあ確かに、…スキル頼りの戦闘だ。
回避スキルの自動発動と剣術スキルの基礎強化による、剣の扱いの強化、簡単に言えばそう、素人でも強化された剣術スキルなら十分に戦えるのだ。
断じて!ハルトが凄いのでは無い。
自身のテリトリーを持つこの森では周知のボスモンスターとしてのプライドのあるトドメの一撃一撃を避け、逃げ続ける
逃げる隙間が針一本もない無い広範囲の大振りの攻撃。
『回避★スキル』でも身体が入るほどの隙間が無いのでは、避けられないように見えたが、ハルトは足を大きく開き、頭を下げて体の高さできる限り下げる新体操のような姿勢で、下に回避する。
そして手で地面叩き、体を起こしながら屈んだ状態での振り向き様の防御、
そう殺意の籠った二撃目も弾く。
激しい動きについていけなくなった髪が、真っ直ぐな瞳を隠したり、表したりする。
「無いのか、コイツには動きの予測点が。」
渾身の攻撃すら避けられたグリーウルフは、地面を足で踏み踏みしていじけたペットみたいな行動をとると、段々と踏む力が強くなり、独特なのに何か心が踊るリズムを刻む、最後にキメとして、ドンッ!
大きな音を出すと足が消えたそして身体、ついには頭さえも、まるで風になった。
辺りに生える大樹の壁を床にして、走ったり飛んだりハルトを中心として縦横無尽に高速移動をする。そしてその木を蹴って移動する途中で中心を向く、シャッと一際大きい木を削る音を出すと、直線上のハルトを通り過ぎる点で爪を振るう。
飛んだ、木には、あの跡が残っていた。
スピードに翻弄され釣られて右回りに全部の方向を向く。それと同時に通過攻撃の圧倒的な威力を少しでも削るために、通過攻撃がどっちの腕を出しているかを即座に見分け、
剣を構えて、出してきた腕と逆の方向に体を回転させる。
シャッ
全方位から突っ込んでくる攻撃の威力を削る技、ハルトの名付けて『くるくる回避』
「何かあるのか、お手おすわりジャンプするときに至っても無音だった野生産の隠密性、
木の跡アレはなんでついてる、
テリトリーを示すためか、木、傷、爪、」
シャシャ、
何か動きの予測になりそうなものを考えていた、思考をフルで回して勝手に口が動いてしまっていた時、また耳を傾ければ微かに聞こえる程度の音が、
「森を切り開いて遭遇した時の音!」
何かを思いついたハルトは戦闘中にあろうことか、目を閉じた。
目で追えない攻撃も回避のスキルで避けれるなら、わざと無駄な情報を消して、音に集中しているようだった。
今まで自身を追っていたものが急に動かなくなったと戸惑ったが。
「見えろ、みえろ!みえろ!
何と無く理解してきた、今までのスキル獲得何かあるだろ、この世界なら!」
そんな隙を許すはずがない、モンスターのプライド
ジャッッ
『獲得 感知スキル』
に速攻で星をつけた。
『感知★』
真っ暗の中、凹凸をわかりやすく白い格子が入ったフィールドが遥か遠くの景色まで感じ取れて、目を閉じている自分を俯瞰視点で見た、周囲の情報が白く光り、目を開いていた今まで以上に鮮明に見える。
狼狽えて弓を手に取るエアリス
静かに静観するキンザン
右から迫ってくるグリーウルフ、
レベル30
「見えるっコレならッ!
ん?」
ハルトはあらぬ方向を見ていた。
何をしても避けられる実績に段々と自分の命の価値が下がったのか、命の危機を見ないで視界に映る一つの白い光が、何か引っかかる。
「ハ……ルト…ルト…ハルト!後!爪!」
エアリスの声で意識が元の場所に戻る。
背後からの爪を感じて、ハルトは上空に回避スキルを使用する、空中に回避をするという無理を★スキルで強制的に実行した結果として宙を舞いモンスターと同じ目線で叫ぶ。
「何かがいるあの光の方向には俺の大切な何かが!邪魔するなら、お前は退け!」
振り上げた剣、自然落下に加えて回避スキルによる瞬間的なスピードアップ、全身の力全部のスキルを使い、振り下ろす解体★の乗った剣。
「解体★斬り!」
鍛治の腕の美しさが際立つ白銀の剣、
刀身の白銀に灰色の刃が綺麗に混ざって
ワイルドで重く鋭い印象の白灰色に変わる。
空気を切り裂く音が鳴り響き、
首に剣がスルリと入る。
白灰狼 グリーウルフ討伐。
立ち尽くす、ハルトに近寄ってくる二人、
一人は今にも泣きそうな顔で、ハルトに抱きつきに行く。
「よかった……ハルトくん?」
でも何か別の方向を見ているハルトに、足が失速する。
「エアリスさん
俺、旅の目的見つけました。」
ハルトは優しい笑顔で振り向き、剣を腰に収める。そして光が反射してキンザン証の紋章が一番強く輝く。
「認めよう、ハルト
お前を村の正式な住人と!」
「あんなの今の村の全員が倒せるんですか?」
「いいや、今の狩人達のあれは村人総出で倒したんだ。それでも十分なんだけどな、一人で倒したのなんてエアリスとお前ぐらいだよ。
戻ったら宴の準備をさせて新しい住人を歓迎しよう、さぁ!」
キンザンは鉄の笑顔で言い切った新しい村の住人と、だがハルトはその言葉を待っていて、次の事を言いかけた話しを遮る。
「それとすいません
俺、行きたいところができました。」
「え何で!?」
変わらない笑顔でそう言うと、エアリスは驚いて聞き返すが、キンザンは何か悟っていたように、目を閉じて微笑むと、狩に誘った時と変わらぬ姿勢で話しを続ける。
「そうか、さぁオリヴィア村に戻ろう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます