7話
空を突くほどの大木、幹の太さが両手を広げても余りある、
実際に先ほどハルトが手を当ててみるとわかった、木の皮がガサガサに乾燥してひび割れて脆い様に見えるが、一つ一つの飛び出た皮は硬く木の幹を守る棘になっている。
それが一メートルもないような間隔で生えそろっていて、
大木は広い大きな葉も生い茂って朝方の日も届かない、薄暗い樹海を作っていた。
「え〜キンザンさん…まだですか?」
木の根っこが地盤を押し上げて、地形を盛り上げている凹凸の厳しい道を軽装で歩いている3人、一番後ろを歩いているハルトが弱音を吐くけれども、二人は軽快に歩く。
「体力が無さすぎるぞ、本当に倒せるのか?」
「答えてくださいよ〜、」
情けなく間延びした声にキンザンが振り向き、馬の尻に鞭打つ言葉を投げつけるが、ハルトは老人のようにどこから持ってきたのか丈夫な木の棒を持って、疲れていることを分かりやすく足をガタガタと震えさせている。
「フンまだだ、さっき言っただろう、そんな近くにいたら村が危険に晒される、アイツらのテリトリーはもっともっと…ハルトって言ったよな、本当に倒せるのか?」
真剣な顔で村の安全をだ良い位置に考えているが、真剣だからこそコレから、なるかもしれない男の心配をする。
「多分大丈夫ですよハルトは私より賢いです。」
「お前より?大半がそうだろう…
剣が答えたってことは、力は有るんだろう、見させて貰うぞ。」
力が無ければ名前すら出ない特性を逆手に取り、キンザンの大きな疑いは、小さな疑いになった。
シャッ
長く厳しい道を進むとより木の間隔が狭まり、木のサイズが大きくなっていく。
そこでキンザンとエアリスの知っている者だけの気を引き締めるものを発見する。
「この木の傷はッ…」
木をまるで巨大な猛獣の爪が引っ掻いたを越して切り裂いた跡が、位置としては目前なのに遠い、かなり木の高い位置にあるのを眼にする。
「むむ」
調べていくとキンザンは困った様な、覚悟を決めた様な気難しい顔をした。
「もう入ったようですね、」
「入ったってどこにですか?」
ハルトの声なんて届かずに、
二人は顔を見合わせて会話をする。
「ああグリーウルフのテリトリーに、ここでは一つルールがある。」
シャッシャッ
耳を傾けると僅かに聞こえる音
ハルトは音が聞こえ続けて苛立ちを言葉にする。
「さっきから何なんですかこの音!」
「音?まさか、大きな声を出すな、」
焦った顔で二人が近寄ってくる、その瞬間ハルトの視界で動くもの全てがスローになる、声も音も面白いほどに低く聞こえる。
走馬灯なのかと嫌な思考が横切ったが、目の端に凄烈な力で捻じ曲がり、悲鳴をあげて折れいく木が見える、
数秒前、ハルトはこの大きさの木と比べても傷の大きさが伝わる跡をつけるモンスターって、どんなモンスターなんだろうと思っていた。
正体が偶然が戦略か、木の葉の隠れ蓑から出てきた。
キンザンが言っていた、『グリーウルフ』の特徴とぴったり合ったモンスター。
白みがかった灰色の見惚れるほどに美しい長毛に、なぜか妙齢の女性を思わせる細長い顔とは対照的に確実に命を喰らう獣の鋭い眼、鋭くそして大きい剥き出しの牙と爪。
キンザン曰く原初のウルフ系統の構造を持っている一番基礎的なモンスターで、それでいて知能もあり、強い。
狩人になる試験のモンスターとしては最適なレベルだと。
突然の攻撃を全員が避け、
空ぶった猛獣の一撃が軽々と細かなクッションの役割を果たしていた腐葉土の層を貫通して地面を抉り取る。
『回避★スキル発動中』
犬にやる芸のお手の状態でそこにいた全種が静まり返った。グリーウルフからしても意外だったのだろう、虎視眈々と待っていた、罠にかかった獲物を捕らえたと思った手が土で汚れた。
「コレを倒せって!?」
一人遅く歩いていたら分断されたハルトが叫ぶが、モンスターが屈辱感のまま爪を振るった。
数センチでも間合いを見誤れば腹を裂く一撃を、自動発動のスキルが体を動かし寸前のところで躱し、
恐怖からか余分に逃げた分、二人との距離が倍以上に離れた、モンスターはハルトの方の匂いを嗅ぎ、どうやら標的を見据えた様だ。
「無理に決まって、」
次の一撃は目で追えなかった。
瞬間目の前に現れた爪と鞘に入ったままの剣の鍔迫り合いの決闘、ハルトの腕が勝手に動き、体を守り相手の攻撃の力を利用して回避の手助けをした。
また二人との距離が離れて、
モンスターとの距離が縮まった。
「戦うんだ!」
キンザンが拳を振り上げて無理難題を叫ぶ、
グリーウルフの危険性を目の前で見て経験もしたハルトはもう諦めかけで、キンザンの言葉から闘志なんて湧きそうになかった。
「エアリスさん!」
「援護はするでもとどめは自分で指すんだ。」
弓を番ながら、
ハルトはギブアップを宣言して、助けを呼んだつもりだったが、二人は一緒のひたむきな瞳で見ていただけ、
「ッんでだよ…」
「出来ると思っている、私はハルトを信じてる。」
胸に手を当て、数日を共にした一番信用してる、エアリスに真剣な顔でそんな事を言われては、
弱気のハルトも額に青筋を立てながら、強く強く返事をした。
「ハイ!!」
『解体★』
無数の灰色の刃が、四方に散り、
モンスターの逃げ場がないように囲むが、
グリーウルフは余裕のある顔で、避けて背後にいた。
ぞっとして、全身の毛が逆立つのを感じて、
体がこわばって動かない。
「剣を抜け!」
キンザンの声が聞こえて、やっと体にかかっていた何かを破った。
剣を手に取り、振り向き様の力任せに、
切る。
グリーウルフは少し後ろに下がり、
あざ笑うように牙を見せ、仕返しだとばかりに見下していた。
無性に湧いてくる怒り、
それと同時にステータスボードが出てきて、
『獲得 剣術スキル』
ハルトは速攻で剣術スキルに星をつけて、
グリーウルフを睨む。
「テメェ、ケモノが」
今までより剣が手になぜか馴染むのを感じて、意気揚々と放った、強気な言葉、
少しの距離を詰めるのは、走りではなく回避スキルを使い、剣の届く範囲まで入る。
驚異的な反射神経とバネで避けられる、
だが、避ける事を予知してもう一度回避スキルを発動、
「ハァーー!!」
イメージ通りの動きが何故かできた無数雨の剣撃、上空に回避をして首を切り付けるが手で弾かれ、仕方な肉球から数センチ上腕を切ろうと振るうが、今度は牙で噛みつかれる。
下降回避で足元に入り、万物全ての生物の弱点、腹を何度も突くが、数本の毛を切るだけでやはりことごとく避けられる。
間合いを取ろうと二つの剣士と犬士は
離れる、
グリーウルフは腕から垂れる、血を舐め取り傷口を毛で埋める。
ハルトも一つ気になった事を調べる。
「解体はあんなに変化したのに、何で?
………そういえばスキルの説明見てなかった。」
『剣術スキル』
戦闘基礎強化、
基礎的な剣の扱いを強化する。
剣撃強化、
練度に応じて剣の攻撃力をプラスする。
「は?だけ?!、自由度を上げるために技をいれないとか、鬼畜ゲーかよ!」
二つのけんしはまた向き合った。
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