6話

『農業スキル★』

植物の植え込み上手、植えた植物の成長促進


植物の一部を掴むと一撃でそれに繋がった全ての植物が取れる。



ハルトは一本のツルにたくさんの芋が実ったツルを掴むと、それを肩まで引き上げて

何も無いところに足をかけて、

流れのまま芋を一本背負する。


高く舞う芋ツル、綺麗な孤を描いて土から飛び出し太陽に照らされ、

まるで上り龍、には到底見えないが、農家曰く自分で取った野菜は可愛く感じると言う。


「このスキルもなんか応用効きそうだな、

伐採スキルは逆に木のみに対象限られてて、応用が効きそうにない。」


全体が丸みを帯びてふっくらした形に、

皮が薄く引き延ばされ中の薄い色が透けている、しっかりした硬さがある。

これは確かに美味い。


「それにしても美味そうだな芋、

じゃがバターとかで食いたいな。」


一通りの仕事を経験し終わらせた

ハルトのお腹がグー〜

といろいろなハプニングが起きすぎて、朝食を摂り忘れている事を知らせる。


「何か食べるのか?」

「芋をもらったんで、食べようかなって。」

「オリ芋は焼くと美味いぞ、蒸すとか茹でるとかじゃなくて、焼くんだ。

私は料理できないから頼んだ!」


「ハイハイ分かりましたよ、簡単なのしか作れないですけど...」


あの後、村人達に自由に使っていいと言われた朝起きた家に戻り、

鉄でできた薪式のコンロを使い、

バケットを軽く焼き、エアリスの要望通りオリ芋をバターをかけてフライパンで焼き、

胡椒に似た香辛料をかけて塩をかける。


ハルトは芋だけでは寂しいかなと思い、昨日の残りのイノシシの肉をベーコンのように塩漬けした物を乗せる。


その上に柔らかくなった芋を十時の切れ込みを入れた物を豪快にバケット一個に芋一個を乗せて伸ばす、大量の湯気から少しハーブの匂いが香る。


「出来ましたよ、エアリスさん!」


そうして2人は芋とハルトを褒め合いながら、

遅めの朝食をとっていると、男がハルトを名指しで近づいてくる声が聞こえる。


「キンザンさんが呼んでたよ、

もしかしたら狩が許されるかもしれないぞ。」


この村の住人は、キンザンから武器をもらった人しか狩には参加できないと言う掟がある。

だからハルトはいろいろな仕事をしたが、

1番適性があるであろう狩だけは参加できていなかった。


「キンザン、

斧や鍬、家にコンロにフライパンまで、いろいろなものを作りその全てが一級品の村の鍛治師、どんな人なんだろう。」


不安と期待を胸に抱き、緊張しながら言われた家に向かう。


古びた石造りの綺麗なドーム状の家、全体的に白い石材だが、煙突部分は煤に汚れ、永年村を作り続けたと言う風格がある。


ドアがひとりでに開き、

小さい何かがハルト達を見る。

ゲームで言うドワーフの姿をしたいかにもな仏頂面をしたおじいさんが出てきた。


「お前が英雄か。」


「多分そうだ、そう言われてる。」


「...見かけによらないか、入れ。」


石造りに見えた家の内装は、

鉄作りだった。


隙間を埋めると言うよりかは石のドームの中に一回り小さい鉄のドームがあるようだった。

一面に貼られた鉄の板に、

場所や用途によって黒い金属 黄色をした金属が散らばり貼られている。


キンザンが小さい椅子に座ると

悪い笑顔で話し始める。


「俺がキンザンだ、村の鍛治師をしている。

率直に聞くがお前良い技を放つようじゃ無いか、イノシシを一瞬で解体する、

木を一撃で何本も切る、技を。」


「あれはスキルによるものです。

俺の力や技というわけでは、」


真剣な目でハルトを見る。


「関係ねぇ、お前の意思で出した技だ、

本当なんだな...じゃあ剣をやる、」


話の流れで軽く言うと、

椅子から立ち上がり、背後に綺麗に飾ってあった剣を、数本取り出そうと背伸びをする。


「良いんですか?俺はあなたに対して何もしてないのに。」


「ああ、この村は良い村だが俺の剣を使えるものってなるとな、どいつもふ抜けた顔してる、お前もそこまで変わらねぇでも、

俺は賭け事も好きなんでな。」


金属で染まった顔から大きな歯を見せると、


腕いっぱいに抱えた武器をテーブルに丁寧に並べる。


ロングソード

ショートソード

バトルアックス

正式名称はわからないが何となくゲームだったらこんな名前がついてるであろう武器達。


「選べ。」

「まあこの中だったら...一番軽そうな。」


手を下ろしショートソードを手に取る。


その瞬間剣に小さい炎の粒が出る、

だんだんと動いていき等身に何かを刻む、

Kousima Haruto かっこいい筆記体で彫られた。


「名前が、違う。」


「何!?そんな事今まで無かったぞ、

本当の名前は?」

「アメムラ ハルトです、

黄嶋はツバキの苗字のはず。」


「何でだ、今からでも彫り直すか?」


「......いや大丈夫です。」


エアリスは手を大きく上げて、

人間でもギリ使える程度の高さの天井に手をぶつける。

「痛ッ!....キンザンさん!私も新しい武器が欲しいです。」


「エアリスお前はもう持ってるだろ、」

「でも20年前のですし、そろそろ」

「古くなったのかガタがきたのか、」

「大丈夫ですけど。」

口を尖らせたエアリスが必死になって、

武器をねだろうとするがキンザン腕を硬く組みあっさりと切り捨てる。


「俺の武器は弱くない

数百年でも保つ分かってることだ。」


話している中、エアリスが差し出したのは、

素人目でも分かる少し不恰好な、

黄緑色や白色の装飾が刀身や柄から浮いていたりする、かなり下手なナイフ。


それを見たキンザンはショックを受けて腕を組んでたことなんて忘れて頭を抱えて固まる、

「でもそうだな、新しい技術も増えた腕も多少だが多少だが、成長した今ならもっと良いのを作ってやる。


...でも少し待て、

お前の短剣は注文が多いんだよ。」


仕方なくを装い頬を染めて了承する。

「やった!あ...」

尻目にエアリスは少しジャンプして喜ぶ。

目の前に映ったのは、


「ツバキ」

憂に満ちた顔で剣を見るハルトだった、

そんな顔を初めて見たエアリスはなぜか爪で自分の指を強く圧した。


キンザンが玄関のドアを強く開けると、

二人を呼ぶ。

「ハルト、エアリス支度しな狩に行くぞ。」





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