5話
「ウン...ウウ。」
目を虚ろに開けうめき声を上げながら
ベットから体を持ち上げようとする。
バタンッ
「ん?」
身体が何かに引っ張られてまた眠る。
その何かを見ると、エア尻。
巨大なお尻に手が潰されて僅かにはみ出してハルトに見える、手が紫色になっている。
その瞬間血の気が引くぐらい恐ろしく感じた。
「え、いつから?いつからこの腕は血が止まっていた。」
いつの間に同じベットに寝たのかわからないエアリスが寝返りを打ち、開放された腕にだんだんと血が回って、感覚が戻ってくる、
腕を走る、骨の髄まで響く激圧の電撃。
「ギャーーーーー!!」
一つの悲鳴が家を越え、村を越え、
村の狩人が狙う森の鳥たちが飛び立つ。
「すいませんハルトさん、
私寝相が悪くてよく隣のベットに行っちゃうんです、ほんっとうにすいません。」
深い眠りから覚めたエアリスは即座に土下座の体制になり、頭をベットに何度も打ち付ける。
「頭を下げないで、ください
その振動でまたっ、痺れる!」
痺れている場所には触らないようにハルトの胸に手を合わせる、そして魔法の光が優しく指の間から透ける。
「気休めなんです、回復魔法でも生理現象やダメージでは無い感覚までは治せないんです。」
手の過敏過ぎた感覚が元に戻ってくる。
ハルトは片目を閉じて恐る恐る手を閉じて開く動作を何回かする、まだ少しだけ変な感覚があるけど、治る。
申し訳なさそうに膝は崩していない、
エアリスがニコッと笑う。
「遅れちゃいましたけど、おはようございます。今、旅の目的とかありませんのでしたら今日は村での生活の仕方を見てもらおうと思って、
お身体はどうですか。」
「...はい、これからお願いします。」
「ハイッ!」
「ウ眩しっ、」
全てが木でできたドアを開けると、昨日あんなことがあったのに明るく照らされた建物、活気に満ちた人、村が見える。
「ここが、オリヴィア村。」
少し見惚れて立ち尽くしていると、
昨日出会った村の男達に声をかけられる。
「おはようにーちゃん、昨日は助かった!
お前は村の英雄だぜ。」
「またモンスターが出たら頼むぜ、
俺らはこれから仕事だからよ。」
支度をし終わったエアリスがハルトの横に立つ。
「今日は村を見て回るので、良ければお仕事も体験してみます?」
「そりゃー助かる、エアリスさんの仕事まで手伝って俺らの仕事も手伝ってもらえるなんて。」
「エアリスさんの仕事?」
「まあいろいろな事をしちゃいるが
1番の仕事は村を守ってくれているのさ
ここだけの話、影の賊からもエアリスさんが
守ってくれたんだ。」
口を手で覆いハルトの耳元でコソコソ話す。
「影の賊といやー大男が埋める、黒い装束の集団、殺しのプロフェッショナル。
義賊なんて言ってるが最近はかなり暴走してる連中だ、3年前何もないこの村を襲ったりな。」
「黒い集団..大男..
ネコみたいな人もいたんですか?」
ハルトの隣で身を大きく跳ねさせて、
目を見開く。
「あーそんなのも居たような、」
言いかけた時、エアリスが優しい笑顔を作り、話を遮る。
「皆さんそろそろお仕事の時間では、」
「そうだな話は後だ、すまねーな英雄様。」
大きく手を振ったり
斧を振ったりして森の方へ向かう男達。
エアリスさんに肩を掴まれて、
家の影まで引き込まれる。
そこで興奮して少し怖い顔気味に、
「猫さんを知ってるの?」
と聞かれる。
「少し助けられて...
この村に行けと言われました。」
そう聞くとエアリスは
子供のような無邪気な顔で手を叩いて喜んだ。
「じゃあ私と同じね、あの人良い人なの、
私がね、森で迷子になっている時に助けてくれて、お礼をしようとしたら次助けを求める人が来たら匿ってくれって言ったの、
そして影の賊がこの村を狙う作戦も事前に教えてくれて、影で私の助けをしてくれてね、
流石に
私も1人で影の賊を倒すなんて出来ないよ。」
「あのネコがそんな事をしたのか..」
ボソボソあんなネコがあり得ないという顔をしつつ、エアリスには聞こえないように言う。
「でねでね、すごい良い人なの!」
そして最後には、
最初にも言った一言で締めて、
荒くなっていた息を整えた。
「おーい!英雄様ー手伝ってくれー」
弓、斧、鍬を持った男達に仕事に呼ばれる、
足早に声のする方に向かうと。
各々木こりをしている村人達がいる、
背の低い木々の森に着く。
「どうしたんですか?」
「やるなら早い方がいいからよ、
ここら辺の木は成長が早くてな、
夜にはここら辺の木大樹になっちまうんだ。木こり手伝ってくれんだろ。」
飾りもない無骨なでも頑丈そうな斧を渡され
背の低い森の中でも一際大きい木の前に立たされる。
「木なんて切ったことないし、斧も持ったことないのに出来るのか。」
重い斧に目をやり、不安んそうな顔で後ろを振り返ると、周りには観衆が湧き、
英雄の力はどの程度かと今か今かと覗く人混みができていた。
「もういいやがんばろう、おりゃ!」
ガツンッ
小さい木のかけらが飛び、
腕にジーンと衝撃が返ってくる。
それなのに木はほぼ無傷。
「筋は良いでもまだまだだ
伐採スキル練度50の俺が見本見せよう。」
『獲得 伐採スキル』
「まただ何がスイッチなのか、わからないな...」
「スーーハーー、 オッ!」
バッン!
大きく破片が飛び
半分ほどの幹まで斧が届く。
「こんな感じで、やれば英雄様もこれると思うぜ。」
「はいもう一回やってみます。」
「一回?英雄様なら何回やってもいいぜ。」
「スキルボード、
伐採スキルに星をつけて、
『伐採スキル★』
やっぱりなった、よしこれなら!」
斧を持つ手に力を入れると、今までは握るのもギリギリだったのに、手に馴染んだ。
「おりゃ〜」
男が情けない声を出して、早く斧を振るう。
目に前には切り株しかなかった。
そしてどこからか聞こえる
バキッバキッギーーーー
と言う巨大な何かが軋む音。
その瞬間隣り合っていた木々が
ドミノ倒しのように倒れていく。
「お前ら逃げろー!」
斧を渡してきた男はギャグ漫画みたいに顔を大きくして、驚いて口を開けて、そのまま大声でみんなに知らせる。
幸いハルトを見ようと集まっていたおかげで誰も倒れていく直線上にはいなかったが、
みんな逃げ惑った。
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