3話

「そうだったんですね!お疲れのとこ、

ぶつかってしまってすいません。」


「大丈夫...では無かったですけど

大丈夫ですよ。」


優しくヒールをかけて、膝枕までしてくれる

痛みが減り、かすり傷が完治した。

二人は立ち上がり、女性がまた深々とお辞儀をして体を上げると、


単純バカのハルトは目の前の豊満な身体に

おっぱいデケェとでも言いたいような目で凝視する。ついでに筆者も見ています。


長い耳に乳の女性曰いわく村の祭典が開かれていて、その準備に追われて村中を走り回っていたところハルトを轢いてしまったという。


「えっと私…エアリスです。」


「え、俺はハルトって言いますよろしくお願いします?」


「よろしくお願いします。しかし私にぶつかる以外は良い時にきましたね!ハルトさんこの村、オリヴィア村の祭典は数年に一度しか無いんですよ。」


エアリスは肘がぶつかるぐらい肩を寄せ、上目遣いでハルトに誘惑する。

「誰でも参加できるので

よろしければ参加していきませんか?」


「...じゃあ参加してみます。」

ハルトは少しの考えたあとエアリスの誘惑に乗せられた、身を任せることに決める。


「今なら私が案内しますよ、私数年はこの村に住んでいるので案内でも何でも任せてください。」

横に大きく腕を広げて見せるように村に手を伸ばし、もう片方の手でハルトの手を引いた。


 村はよく言えば素朴な

悪く言えば原始時代に毛が生えた程度の文明しか発展していなかった。

だが濃い茶色の木で作られた家々は簡素作られたのかと思えば、かなり精巧に作られている。木材の一本一本の隙間が空いていないそれなのに所々修理をした後が残っている。


「結構綺麗ですね、」

「え?照れちゃいますよ〜」

「家ですよ。」


「ヘ?いや、……分かってましたよ別に、あの〜、いい職人さんがいるんです、家はもちろん武器や工芸品までなんでもできるオーダさんと言う方が居るんです。」


 指をやるとベンチや金属の武器

ナイフや剣盾に至るまで置かれている。


「あっそう言えば、今なら解体ショーに参加できます、私のおすすめなんです行きましょうハルトさん。じゅるり」

 ハルトの頷きすら待たず口から涎を垂らした、ご機嫌なエアリスは走り出す。


 エアリスの足は早くハルトはタコみたいに吹き飛ばされそうになりながらもすごい力で手を持たれて、飛んで行かないようになっていた。しばらく拷問を受けていると解体ショーが行われている場所に着く。


 体格のいい大人が取り囲んでも幅に届かないほど大きなテーブルになめし革を乗せて、その上にまた大きい猪のような獣の肉体が置かれている。


「デケーバカデケー」

「ニクー」

ハルトの子供のような感想に

食欲で便乗するエアリス。


 観ていると解体をしている男達から

「新顔だなにーちゃん解体手伝ってけよー」

と言われ男達が手招きしてほぼ強制的に

解体をすることになった。

「大丈夫ですか俺何も知らないのに、」


「まあ緊張なんてすんな、誰でもやるんだ

この村に来た人間の儀式みたいなもんさ。」



「じゃあ...やります。」


 渡されたナイフを男の指で線を描かれた所に沿うようにいれる。


 ナイフの剣先が肉の膜突き破り、

肉の重さで押されナイフが動かしづらくなる、力ずくで切ろうとナイフをギコギコ前後させると骨に当たって剣先が刺さってしまいナイフが完全に動かなくなる。


その時『解体スキル獲得 練度2』と目の前に表示される。


「え、じゃまじゃま肉が見えないだろ、

スキル。」

声でステータスボードが閉じると

今まで重く動かしづらくなっていたナイフが

スルスルと肉を切れる、そしてどこを解体すればいいのかも頭の中で線が引かれて分かる。



「ほー上等な腕じゃ無いか何も知らないなんて謙遜しやがって〜このー。」


いつの間にか後ろに溜まっていた男達に口々に褒められ背中を小突かれて、新入りの儀式だと言う解体ショーは終わった。


「練度はすぐ上がるのか

ん〜いや最初は早く上がるタイプなのか。」

ハルトがボソボソと呟いていると

後ろから覗いていたエアリスが話しかけてくる。


「練度がもう上がったの!?

もしかして解体とか得意だったのですか?」


「いや解体とか初めてです。」


「え、じゃあなんで練度が2じゅ」

ハルトは本当に知らない顔をして返答を返すけどエアリスは何かが引っ掛かり言いかけた瞬間、


ドーン!!

大きな音と共に砂煙が上り木の破片を舞い散る。


「モンスターだー!!」

大声で知らせるがもう遅い、土煙を掻き分け

解体されていた猪の一回りは大きい個体が突っ込んでくる。


「どいてください!」


エアリスは猪の前に立ち他の村人に警告する

今までの雰囲気が変わり、

弓道の動作のように手を伸ばし、

背中にある空気を掴み

空気の弓につがえる。


風がその矢に収束してきて、空間に渦を巻くように見えた。


「え?あれ!私の武器が無いです!」

当の本人は弓を弾く動作をして、やっと手には何もないことに気づく、途中から気づいていたが、アホの子だ。


「魔法じゃないの!?」

渾身のツッコミも虚しく、猪の一撃の音圧で

かき消される。


突進を決死の飛び込みで交わす二人


『回避スキル獲得』

「やった〜って

そんなん言ってる場面じゃないって。」


壁にぶつかってハマった牙を取ろうと、もがいているが木を破壊してすぐに村の方を向く。


次の標的は、


「俺!?」

俺の方に突っ込んできた、一歩一歩が地面を鳴らし異世界でしか見ない質量が来る。


と思っていたのに目前でフェイントをかけ本命のエアリスの方に向く。


「エアリス!」

「え?」


エアリスは回避行動に失敗して、足を崩して転んでいる、絶対に逃げることは不可能、当たればあの頑丈なエアリスでも、危ないんだろう、ハルトは回避スキルを逆に使用して

エアリスの前に出る。


汗で、顔も服もスキルボードも濡らしながら咄嗟の事で無意識のうちに動いていた、

緊迫したこの状況でこの場を打開する一手を思考を力任せにぶん回して考える。


「『★スキル練度MAX』

星をつけたスキルは強化される!……一かバチだ、解体スキルに星をつけて強化!


『解体★』!!」


ハルトの伸ばした手の平から

灰色の刃が無数に出てきて、分厚い毛皮も簡単に当たっただけで切り、猪のぶっとい四肢を切り取り、頑丈な牙を剥ぎ取り、


元々猪の居た場所には綺麗にされた標本のような、骨だけが残り皮と肉が綺麗に分かれて、地面に置かれている。



「何だ…これ…?」

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