2話
目を閉じさせられ手を胸の上で交差するように寝させられていた、あたりには血の乾いた微妙な臭さと鉄分の匂いが漂う。
太陽の光が木漏れ日になって差し込み、
ハルトの目に光を取り戻す。
「ネコさん…ネコさん…」
まだ意識が朦朧としながらも辺りからの猫耳を探そうとするが、
男のハルトでも身動きが出来ない程の力なのに踏まれて潰された草も、跡を綺麗に消した跡すら無かった。
だが一つだけ口の中で舌に引っかかる物があることに気づく、手の平に出すと手紙の入ったガラスのカプセルだった。
『感謝しろよ、仮死状態にする薬だ
血もナイフについてるやつだし危険はない。
あの時、ここら辺を知らないと言うお前の言葉が本物ならあの街には帰らないほうがいい。
お前もわかっただろあの街は、獣人を捕まえるためになら、同種の人間さえ撃つ。
今戻ったら私のことを聞かれ拷問を受けることになるだろうな、拷問が好きならイケば良い。
でも違うなら、近くのもう一つの村に行け、
もう会うこともないだろう
じゃあな、ハルト。
断じてお前を助けたんじゃないぞ、
私の心情を守ったまでだ。(肉球)』
小柄ば肉球のマークがついた最後の文に
何となく手を合わせてみると
逃げる時手を握られたことを思い出す、
大体自分の手と同じ大きさだった。
「あの人可愛かったなぁ」
お腹に残った柔くて小ぶり感触に手をワキワキと動かしながら、ハルトはしみじみと言うのだった。
「ここは何処なんだ、」
危険がないか辺りを見渡すと、
もう一度混乱していた問題を考え直す。
「ツバキと帰ってたら気がついたらあそこにいて、なんか危険そうだったからついて行って、そしたら殺されて。
魔法とかあるし、
何だっけ自動発動なんとか
また一瞬だけ見てる夢なのか...」
手を見て握る、
紙がクシャと音を立てて無数の折り目がつくリアルな感触がここは現実だと
飛躍した考えを戻す。
「俺は自由になったのか?ツバキ...アイツ1人だよな、
……今は隣の村に行ってみるしかないか。」
森を抜けると街の反対の道を、ハルトは帰り道を歩くように普通に歩き始めた。
歩き始めて早2時間、
あの大きかった街の壁が見えなくなっても
遥かに長く続く道以外にはまだ何も見えなかった。
「あの猫、何言ってんだ隣にあるってどう言うことだよ!」
汗を流しもう喉も枯れて、
叫び声は何処か掠れていた。
「マジで、死ぬぞ
死にかけたのにまた死ぬぞ。」
その時チョロチョロと水の流れる音が聞こえた、ハルトはその音に齧り付き、音の発生源を探す。
少し高くなって傾斜になっている道の下に
綺麗な小川が流れていた。
手で掬うとシワの一本一本がくっきり見えるぐらい透き通っている。口を固く閉じて飲もうとしなかったが、口から漏れるヨダレが一滴垂れた時、
「危険かもだけど、ダメだ飲もう!」
欲望に勝てず水を飲みまくって
お腹がタポタポになる、ハルトは体重に身をまかせ川辺に倒れ込んだ。
ふと横を見ると
『浄水スキルのないものは危険』
と書かれた看板。
「ブッ!スキルって何!?もう飲んじゃったよ!」
ハルトは盛大に吹き出し、
座るとお腹を抑える。
「なんかもうお腹痛くなってきた気がする、
って何だコレ。」
ハルトのスキルと言う声に
反応して目の前に灰色のボードが出てくる。
『スキル習得
浄水スキル練度1』
『演技スキル練度2』
『★スキル練度MAX』
「スキルなんてあるのか?!
今までも思ってたけど本当にゲームみたいだなこの世界。」
もう一度言ったスキルとう言う声に反応してステータスボードは閉じられる。
「声で反応するのか、このステータスボードどういう原理で、
指が貫通してスキルボードと触れてる部分だけ少し緩くて、少しだけ気持ち悪い感触がある、指を動かしていきスキルを押してみる。
「反応は無し今の状況では使えないのか?」
『★スキル
強化スキル
あらゆるスキルに星をつけたり外したりすることができる、星をつけた物は強化される。』
と簡単な説明が出てくる。
「へーなるほどなぁ、左上に書かれてる
12歳って何?」
自分で言って初めて気づく、
自分のステータスボードに書かれた12歳が意味する事。
バシャバシャッ
水面が揺らぎ多少見にくくはなるが、
ピチピチの肌顔の造形が確かに幼い。
「何だこの顔っ若返ってる?」
大体12歳ごろの顔そう言えば、
おかしかったことが頭によぎる体が軽い事、
小さい猫と手の大きさが同じだった事、
その他諸々だ。
「異世界に来たってだけでも驚きなのに、
若返ってるなんて....」
ショックでやっと静かになったからか近くから、人の声がかすかに聞こえる。
「人が居るのかもしかしたら。」
森の中を少し進むと、
高いが木の上には到達しないほどの切り揃えられた丸太の壁、
そこに一つだけ空いた大きな門。
道をゆく人は見たことが無いような
服ではなく装備を着て、剣や斧など武器をを持っている。
「あんなの銃刀法違反だ明らかに普通じゃない、本当に異世界なのか?本当に危険は無いのか?山賊とか、でもそんなのゲームとか創作の中だけの、」
ハルトは顎に手を当てボソボソ呟いて門の方まで歩いていると、街の門を抜けた直後
甲高い悲鳴と共に何か柔らかい物に
ぶつかる。
「グボアァ!」
ハルトは衝撃をモロに受け、今までの人生で1番のダメージを負い数メートルは吹き飛ばされる。
成人ぐらいの美少女のたわわに実ったショック吸収剤が大きく揺れハルトの方に向かってくる。
「すいませ〜ん大丈夫ですか?」
長い耳に金色の髪
優しい顔で心配されて聖母のような膝の感触にハルトは感謝しか言えなかった。
「ありがとう。」
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