第4章

第23話:平穏な朝

 窓から入り込む日差しで目を覚ました俺は、アーリィが眠るベッドに寄りかかっていることに気づき、ゆっくりと体を起こす。


 夜中にアーリィが目覚めるかもしれないと思い、付きっ切りで看病していたつもりだったのだが……。


 知らないうちに眠っていたみたいだ。


 すでに朝になり、雨も上がっている。


 肝心のアーリィの様子を確認してみると、ポーションが効いたのか、スヤスヤと眠っていた。


「貧血を起こしていないか心配していたが、どうやら杞憂に終わったみたいだな」


 顔色が良くなったアーリィの姿に安堵した俺は、重い体を動かして、キッチンに向かう。


 本来であれば、どれだけ疲れていても、自分で朝ごはんを作らなければならない。


 しかし、【箱庭】の調理システムを使えば、レシピを選ぶだけで作ってくれる。


 俺は改めて、その便利さを実感していた。


「朝はやっぱりパンだよなー。少し贅沢に蜂蜜も使うとするか」


 疲れを吹き飛ばすような甘いものが食べたいと思い、昨日と同じハニートーストができるのを待っていると、部屋の中から物音が聞こえてくる。


 どうやら蜂蜜の甘い香りに刺激されて、ウサ太とクレアが目を覚ましたみたいだ。


 しかし、両者の反応は正反対だった。


 危険な山を生き抜いてきた経験を持つウサ太は、朝でも反応が速い。


 俊敏な動きを見せて、すぐに朝ごはんをねだりにやってくる。


 一方、目をこすって眠そうなクレアは、よたよた歩きでやってきた。


「トオル……。甘い匂いがするぅ……」

「今用意するから、もう少し待っていてくれ」

「はぁーい……」


 先にウサ太に朝ごはんをあげた方がいいと思い、ニンジンと蜂蜜を用意する。


 その間に俺とクレアの分のハニートーストが完成したので、みんなで朝ごはんを食べることにした。


「あまひー……」

「きゅー……」


 両者ともにじっくりと味わいながら朝ごはんを食べ進める姿は、出会って間もないとは思えないほど同調している。


 昨日もアーリィの看病をする際、ウサ太とクレアは息がピッタリと合っていたから、良い友達になれるのかもしれない。


 ウサ太も遊び相手ができると嬉しいだろうし、クレアも余計なことを考えなくて済むはずだ。


 まあ、食欲はあるみたいだから、悲観的になる必要はないような気もするが。


「食後にリンゴもあるから、遠慮せずに食べてくれ」

「はぁーい……」

「きゅっ?」


 どうやらウサ太も食べたいみたいで、リンゴという言葉に敏感に反応していた。


 餌を与えすぎるのは良くないと思うが、ウサ太を怒らせるような真似もしたくない。


 なんといっても、うちの癒しペット枠、兼、最大戦力なのだから。


「……ウサ太も食べるか?」

「きゅっ!」

「あまり食べる過ぎるなよ」

「きゅきゅっ!」


 余裕で食べられる、と言わんばかりに鳴いたウサ太にもリンゴを分けた後、俺もハニートーストを食べ始める。


 やっぱり甘いものは癒されるなー、と思いながら。

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