第55話 桔平---side3

花乃は自分から言わなかったけれど、教師という立場を利用して、花乃の誕生日を調べた。職権濫用してしまった。


約束を形にしたかった。

それで誕生日プレゼントにペアリングを買った。


その頃、僕と花乃のことが噂になっていたのは耳に入っていた。

でも、全部バレても構わないと思っていた。

教師になるのは夢だったけれど、もし、どちらか選ばないといけないとしたら、迷わず花乃を選ぶ。



花乃の指に指輪をはめたタイミングで、大貫先生に見られてしまった。

だから全部話そうと思った。


けれども、それを花乃が止めた。


花乃は知られたくないと思っている?


花乃が知られたくないと思っているなら、自分が言うわけにはいかない。


花乃の真意を図りかねていると、筒井先生が、指輪は自分のものだと言い始めた。


そして花乃が指輪を、花乃の手から、筒井先生に渡してしまった。


それで何も言えなくなった。


その後のやり取りは聞いていなかった。

誰が何を言ったのか、全く頭に入っていなかった。


ただ、走ってその場を去って行った花乃のことばかり考えていた。

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