第50話 メモ書き

吉にぃのお店で、使ったお皿を片付けていると、お姉ちゃんが戻って来て一緒に片付け始めた。


「お姉ちゃんどうしたの? 何か忘れ物? 帰ったんじゃなかったの?」

「……花乃、わたしさっき、向坂さんに会った。徹人と一緒にいるところ見て、勝手に勘違いして、あの人、徹人のこと殴った」

「どうして!」

「自分で理由聞いたら?」

「それは、無理。もう会えない」



ボールを渡してもらったあの一瞬会っただけで、過去に引き戻されている。


もう一度会うわけにはいかない。



「決着ついてないから、先に進めないんでしょ? ずっと今のままでいいなんて思ってないなら、きちんと話しなさい」

「お姉ちゃん?」

「これ、預かってきた」


お姉ちゃんが、小さく折り畳まれた紙をくれた。


「話をしなさい。必ず話をしてから式に出席して」

「……わかったよ」




お姉ちゃんを店の外まで見送ってから、もらった紙を広げた。


久しぶりに見る桔平ちゃんの字。

きれいな字じゃないから、読みにくいって、世界史を選択してた生徒によく言われる、って言ってたっけ。


中に書かれているメッセージを読んだ。


『明日 部屋に来て もしまだ鍵を持ってたら 入ってて』


部屋?

部屋ってあの、アパートの部屋のこと?



桔平ちゃんは、まだあの部屋に住んでいるってこと?

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