第46話 第二の家

吉の前で突っ立っていたら、ドアがいきなり開いた。


「やっぱり花乃ちゃんだ! 声がしたからそうかと思ったんだ!」


弥生さんが嬉しそうな顔をしてくれた。


「ねぇ、花乃ちゃんが帰ってきたよ!」


店の奥に向かって声を上げると、小さな男の子を抱っこした吉にぃが出てきた。


「おぅ、お疲れさん」

「そうだね、疲れたでしょ? そんなとこ立ってないで中に入って」

「光太郎くん、大きくなったね」

「そうなの! ちょろちょろ動くようになって目が離せないのよぉ」


あの時、急に出て行ったのに、吉にぃも弥生さんも以前と変わらない態度で、優しく接してくれる。


「2階の部屋、そのままにしてあるから、そこに泊ってね」

「ありがとう」

「姉貴達は式の前日に戻って来るんだろ? お前らもっと余裕もって行動できないのかよ?」

「しようがないよ。お母さんが盲腸になっちゃって、退院がギリギリなんだから」

「タイミング悪いなぁ」




その日の夜は、久々に吉にぃの料理を食べた。

光太郎くんをあやしながら、弥生さんが言った。


「ここを花乃ちゃんの家だと思って、いつでも帰って来ていいんだからね」



その言葉が温かくて優しくて、泣いてしまった。

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