第36話 知らないうちに

お昼休憩は誰とも話したくなくて、図書館前に置かれたテーブルに突っ伏して寝たふりをしていた。

12月の寒い中、外にいる生徒なんていないから誰も来なくて救われた。


それなのに、わざわざ話しかけてきた子がいた。


「茅野さん、ごめんね」

「何?」

「わたしらてっきり、向坂先生と茅野さんがなんかあるって誤解してた」


文系クラスの子達だった。

確か、桔平ちゃんが教えてる世界史を選択してる。


噂流してたのこの人たちだったのか……

噂じゃないから否定もできなかったけど。


「資料室で2人でいたり、放課後よく一緒にいるの見かけて、やけに仲良さそうだったから、怪しいって思ってた」

「ジュースとかお菓子とかもらってるのも見て、茅野さんが特別扱いされてるって勝手に思ってた」


そんなに見られてたなんて気が付かなかった。

全然隠せてなかったんだ……


「口止め料だったんだね」


え?


「筒井先生が、茅野さんにはいろいろ見られちゃって、向坂先生がワイロ代わりにお菓子あげたりしてたんだよ、って」

「ほんっと、ごめんね!」


何それ?

筒井先生、なんでそんなこと?




知らない間に、本当が嘘になって、嘘が本当になっていく。

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