第16話 夏休みの終わり

わたしにとって、特別だった夏休みが終わる日、まだまだ先の話だったけれど、連休の予定を立てるために、桔平ちゃんの部屋に来ていた。

レンタカーを借りて遠出をしようということになったけれど、どこに行くかなかなか決まらなくて、結局、また次に会うまでにお互い考えておくことになった。



「花乃、明日、部屋で待ってて」

「何?」


当たり前のように、花乃って呼び捨てにされる。


「何かあるの? 教えて!」

「今はダメ。明日」

「桔平ちゃんのケチ」


「恥ずかしい」と言われたけれど、結局「ちゃん」づけで呼ぶようになった名前。


「大切な報告があるんだ。きっと花乃も喜んでくれるはず」

「なんだろう? なんだかご機嫌だね」

「すごくね。それに緊張してる。これは全部、花乃のおかげ。花乃がいてくれたから」

「えーっ、わたしってすごいの?」

「うん。それに、誰よりも大切」

「わたしもだよ。桔平ちゃんが一番好き!」



優しいキス。


わたしを愛おしいという目で見つめてくれる。


いつもと違って首元から胸の方に向かって何度もキスをされた。


手が、服の中に入ってきて、ゆっくりと上に向かってさわられる。


「桔平ちゃん……待って……」

「……ごめん」


少し寂しそうな顔をされてしまった。


「嫌いになった?」

「全然。花乃がいいって言うまで待つよ。でも、抱きしめるのはアリ?」

「うん」


背中にまわされた両手。

ずっと、強く抱きしめられていた。



大切に、思ってくれてたんだよね?



あきれたんじゃないよね?




あの時、「いいよ」って言ってたら、未来は変わってた?

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