第11話 未来予想

金曜日の夜、向坂さんからいきなり電話がかかってきた。


「どこか具合でも悪い?」


どうしてそうなるんだろう?


「元気ですよ」

「本当に?」

「はい。どうかしたんですか?」

「今日、吉に飲みに行ったら花乃ちゃんがいなかったから。体調でも崩したのかと思って心配になった」

「わたし、臨時で働いてただけだから。あそこでずっとバイトしてるわけじゃないんです」

「そうなんだ。だったら良かった」

「向坂さん、飲みすぎてませんか?」

「今日は飲んでない。飲みに行ったわけじゃないから……」

「何しに行ったんですか?」

「あーっと、それはまた今度、会った時に話すよ。そうだ! りんご飴」

「りんご飴?」

「最近はいろんな種類があるんだね。仕事で行った先で、行列見かけて、何かと思ったらりんご飴で驚いた。屋台のイメージでしかなかったから」

「そうですね」

「興味ない?」

「あんまりないかも」

「そっか。じゃあ、モノクロスイーツとか?」

「ふふっ」

「おかしなこと言った?」

「それ、何見て話してるんですか?」

「……バレた?」

「はい」

「花乃ちゃんの好きな話題って何かな、っていろいろ調べてました」

「そんなことしなくても、フツーの話で楽しいですよ。お仕事の話でも何でも」

「仕事の話はつまらないよ」

「忙しいんですか?」

「うん……毎日ね。ごめん、グチになりそうだからもう切るね」

「あ、はい」

「おやすみ」

「おやすみなさい」




この頃は、付き合ってるわけでもないのに、何の不安もなくて、未来には、幸せしかない気がしてた。

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