第10話 ふわふわ

ラーメンを食べるのに、お姉ちゃんの服は借りにくくて、カットソーにジーンズという服で出かけたら、仕事帰りでスーツ姿の向坂さんと、あまりにも不釣り合いで、凹んでしまった。


「今日は、一段と若く見える」


向坂さんに変な感想を言われて笑った。

気にしてるわけではないみたいでホッとした。




お勧めしたラーメンを喜んで食べてくれた。


「これ、塩ラーメンなのに磯の風味がする」

「美味しいでしょ?」


前に吉にぃが連れてきてくれたお店だった。

料理人だけあって、吉にぃが教えてくれるお店は本当に美味しい。


「花乃ちゃん、またじっと見てる?」

「そんなに見てませんよ? そういうの、自意識過剰って言うんです。知ってますか?」

「そっか……ごめん」


嘘です。

ずっと見てました。


向坂さんの嬉しそうな目が好き。

笑った時の優しい顔が好き。


そんなふうに思いながら、見てました。




お店を出て、駅まで歩いてる時だった。


「夏祭りがあるんだね」


商店街のあちらこちらに貼れているポスターを見て、向坂さんが言った。


「行く?」


最初、その言葉の意味がよくわからなかった。


夏祭りには行くタイプ? という意味なのか、それとも単純に、行く予定あるの? みたいな質問なのか。

それで黙って顔を見ていたら、何か気が付いたのか、言いなおされた。


「一緒に行く? って聞いたつもり」

「行きます!」

「即答だね」

「はい!」

「じゃあ、行こう」



同級生のノリともどこか違う。

でも、背伸びして合わせてる感じでもない。

向坂さんだからなのか、一緒にいると、いつもふわふわした気持ちになる。

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