第7話 初めての約束

「連絡するね」って言われて別れたけれど、それっていつのこと?


家に帰るまでも、家に帰った後も、気になってスマホばかり見てしまう。

いつもは家に帰ったらスマホなんてその辺に置きっぱなしなのに、今日はずっと持ち歩いてる。


でも……連絡なんて全然こない。


「連絡する」って、今日のこととは限らないんだ……


こんなのずっと続いたら、心臓持たないよ。



時計を見ると、もうすぐ9時だった。


お姉ちゃんが帰って来る前に、先にお風呂に入っておかないと。




お風呂から出て、タブレットでぼんやりと動画を見ていたら、スマホにメッセージが届いた音がした。

誰だろ?

千世かなぁ。

何気なくスマホを手に取ると画面に『今、電話しても大丈夫?』と表示されていた。

サッカーボールのアイコンは、向坂さんだった。


『大丈夫です』


返信すると、すぐに電話がかかってきた。


「はい」

「花乃ちゃん? 向坂です」

「わかりますよ」


友達同士だと名前なんかわざわざ名乗らないから変な感じ。

画面に名前が出てるのに。


「えっと、なんか緊張してます。女の子に電話なんていつぶりかも思い出せない」

「そうなんですか?」

「そうです。えーっと……この間の傘のお礼に、ご飯でもどうですか?」


なんで敬語なんだろう?

笑いそうになるのを我慢する。


「傘のお礼なんていいです! でも、ご飯は行きたいです!」

「良かった。日曜日は暇ですか?」

「暇すぎです!」


向坂さんが電話口で笑うのがわかった。


「11時に、駅前で待ち合わせでも大丈夫?」

「はい!」

「楽しみにしてます。じゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」



デート〜っ!!


本当は家が近いから、家の前で待ち合わせもできたけど、近くに住んでいるのは内緒にしておこう。

駅前で待ち合わせの方がデートっぽい。


お姉ちゃん、ワンピ貸してくれるって言ってたよね。


どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい!


向坂さんの変な電話も楽しすぎる。




お風呂から出て来たお姉ちゃんを待ち伏せした。


「お姉ちゃん、日曜日、ワンピ貸して!」

「いいよぉ。どこか行くの?」

「ご飯食べに行く」

「千世ちゃん……じゃあないみたいだね?」

「へへっ」

「あー! デートだ!」

「ご飯食べに行くだけだってば」

「わかった。だったら、靴とカバンも貸すから楽しんでおいで」

「お姉ちゃん、ありがとう!」

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