五通目往信 過去からの手紙

 ここはとある郵便局、どこにでも存在しどこにも存在しない、いつからに建っていたのかすら誰も知らない。

 どこかの街角はたまた人里離れた山の中、古今東西、人のいや人ですらないモノたちが住む場所ですら、誰かの目の端にひっそりと佇んでいる。


 そんな摩訶不思議な郵便局には曰く付きの手紙が集められる。

 今回の手紙もまた、そんな曰く付きの一通であった。


 郵便局長の無数の触手によって仕分けされ、黒いローブを纏った配達員たちは担当地区への手紙をそれぞれ受け取る。

 そして、配達員たちはふよふよと虚空を舞い、次元の扉ゲートをくぐり消えていく。


 届けられた手紙はどんなドラマを綴っていたのだろうか?



🍷🍷🍷



可愛い千代丸 

いえ いまは菊池 四郎 武光殿でしたね


武光殿は今 どちらにおいでなのですか

もう元服を済ませ 童わらわではなくなったお前様が 

今さら神隠しに遭ったとは 母はどうしても思えぬのです


人攫ひとさらいに遭ったという者もおりますが

僅か十四とは言え 鬼神のごとく剣も弓も達者なお前様が 

人に遅れをとるはずがありませぬ


殿様ちちうえ 叔父上様 跡目様あにうえはじめ ご家臣の多くも大友氏に討たれたと聞きました

でもいくら初陣とはいえ お前様が討たれるはずはない 

お前様には不動明王様と 観世音菩薩様のご加護がついています

そう母は信じております


なにか事情があってのことならば 母は全てを飲み込みましょう

なにゆえ姿を見せぬのか 言えぬ理由わけなら聞きますまい 

しかし今こそ 殿様ちちうえの跡を継ぎ

お前様が お家いえのために立つときではありませぬか


この文を かの地に詳しい間者しのびに託します


文のひとつ 便りのひとつでよいのです

お前様の無事を 母に知らせてくださいませ

さすればこの母が 万の援軍を差し向けましょう


妾腹そくしつの子と 軽んじられた日々もここまで

武光殿 いまこそ お前様の時なのです

殿様ちちうえ、跡目様あにうえの無念をはらすのです


いま菊池のお家いえは お前様の肩にかかっているのですよ





~ この手紙の返信は後半に…… ~





※今回のお手紙は『🐤小烏つむぎ』さんに書いてもらいました!トリではありませんよ。カラスです。

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