五通目返信 過去からの手紙
拝啓 母上様
拙者の身を案ずる文、しかと拝読いたし申した。
幾度も幾度も、しぐれた文が滲むまで。
母上様の御心労、げに忝のう御座います。
この度の首尾を申しますに、拙者、異世界なる面妖な世にやってきた次第であります。
重々、記憶ばかりも失いたであろう。
…………
………
……
…
🍷🍷🍷
以下、郵便局長による自動翻訳:
拙者の心配をしてくれた手紙はしっかりと読みました。
何度も何度も読み返し、涙が落ちた手紙が滲むまで。
母上様にご心配おかけして、申し訳ない気持ちで一杯です。
これまでの経緯としましては、拙者は異世界という不思議なところに来てしまったようです。
さらに、記憶も失っていました。
右も左も分からなく途方に暮れておりました。
その時に、関川フタヒロという御仁に助けられ、冒険者ぎるどという寄り合いにお世話になっておりました。
巷に跋扈し人に徒なす妖怪、こちらの世界では魔物というものを討伐したり、ダンジョンという迷宮を探索するという生業でありました。
記憶を失っていたとはいえ、不動明王様の御加護があったからか武芸に衰えはなかったので、立派に菊池のお家の名に恥じぬ働きができたと思います。
その後、魔王という悪逆の徒の頭領を討伐する一員に選ばれました。
しかし、鬼神のごとくどころか鬼神そのものである青木大魔神殿によってあっけなく敗れ去りました。
しかしながら、事前に聞き及んでいた話とは違い、青木大魔神殿はそれは大層ご立派な君主であられました。
誠に優れた治世によって城下町は栄え、様々な異人たちである民草たちは大層幸せで活気に満ち溢れておりました。
拙者は青木大魔神殿に感銘を受け、奉公しながらその手腕を学びました。
幾年過ぎ去った今、母上様のお手紙が届いた次第であります。
このお手紙を読み、全ての記憶が蘇りました。
拙者は青木大魔神殿に事情を説明し、なんと青木大魔神殿は快く元の世界へ戻す算段をつけてくださいました。
青木大魔神殿をこの異世界に派遣してくださった『あの御方』が拙者を元の世界へと戻してくださるそうです。
しかしながら、こちらの世界にも心残りがございます。
異世界にやってきた時にお世話になった関川フタヒロという御仁でありますが、拙者と同じように青木大魔神殿の下で励んでおりました。
この御仁も同じように元の世界に戻ることとなりましたが、大層だらしがないのです。
長いモノで叩かれると悦ぶというクセがあり、夜な夜な遊郭に繰り出し散財してばかりおりました。
それ故、拙者も関川殿と一時同じ世界へと渡り、日の本の男児に恥じぬ大和魂を叩き込もうと思います。
関川フタヒロという御仁を真っ当な人間にし、残されていた御家族の元へと帰す。
それがかつての御恩に報いる奉公だと確信しております。
少々厳しくしてしまい両腕をへし折ってしまいましたが、心を鬼にして関川フタヒロを立派な侍にしてみせる所存であります。
義を果たした暁には、菊池のお家の立派な跡取りとなれることでしょう。
敬具
聖大剣士・巌鉄斎
改め、菊池四郎武光
追伸、母上様が息災であられたこと、誠に喜ばしくございます。
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